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拒否をするなら金をくれ!(理事会活動協力金)3

前回のまとめ・あらすじ

理事会活動協力金制度を作る際に、以下に記した重要なポイントを踏まえることが重要であることを書きました。

  1. 透明な説明と合意形成(総会での承認を得るため、制度の目的や必要性を丁寧に説明し、区分所有者の理解と合意を得ることが重要)

  2. 適切な徴収金額の設定(徴収金額を適切に設定することが重要)

  3. 辞退理由を問わず徴収(役員を拒否する理由を問わず、協力金を徴収することで公平性を確保する)

  4. 柔軟な理事会出席方法の検討(特に外部区分所有者による協力金制度への反対を減らすために、オンライン参加や代理人による理事会出席を認め、物理的距離をなくすことで役員出席し易い環境を提供し、それでも役員を辞退する場合に協力金を徴収する)

  5. 総会での承認(この制度を管理規約や細則に条文を盛り込み、総会の決議を得ることで、制度の正当性を確保する)

これらのポイントを踏まえ、理事会活動協力金制度を導入することで、公平性と効率性を高めることができます。

今回のコラムでは、「理事会活動協力金ルールの効果(事例)」と「ルール導入後における究極の選択」について書こうと思います。

理事会活動協力金ルールの効果

僕が共同経営する管理会社(クローバーコミュニティ)が管理業務を受託するマンションの多くで、前の管理会社時代に設定された理事会役員の輪番制が殆ど機能しておらず、高齢や仕事など様々な理由で、または単に「やりたくない」という理由で役員の辞退者が続出しており、「役員を受任する区分所有者との不公平感を是正したい」「簡単な役員辞退を防ぎたい」との相談が多いです。
そこで、前回のコラムで書いたような注意点に考慮して理事会活動協力金制度を提案します。
すると、次の効果がてきめんに表れます。以下はすべて事例に基づいたものです。

理事会役員を引き受ける区分所有者の増加・議論の活性化

役員を無条件に辞退できなくなることから、これまでより明らかに役員を引き受けてくれる区分所有者が増加します。
また、前回のコラムで書いたように「外部に居住する区分所有者にも役員資格を与え、オンラインでの会議参加を出席扱いとする」ことで、外部区分所有者の役員辞退者が減少します。
会議への参加ハードルを下げることで「役員をやっても良い」「実は不動産オーナーとして参加してみたかった」となってくれる方が一定数いる、ということですね。
また、そもそも外部区分所有者の多くが、所有する部屋を賃貸に出して家賃収入を得ています。マンションの維持管理が悪いと家賃や入居率の減少など不利になりますから、不動産投資の目線で意見を出してもらうことになるでしょう。理事会の議論に多様性が生まれ、管理組合の運営にも有益なのです。

管理組合の収入増加

理事会活動協力金制度を作っても、なお何らかの事情で役員を辞退する方は必ずいます。そのときは「理事のなり手がいないのでなんとか引き受けてくれませんか」と泣きつかず、さっさと辞退を認め、お金をもらうようにすることで、管理組合としての収入が入ってきます。
管理組合は企業と異なり、自ら売上(収入)を増やす手段が極めて限られていますので、何もしなくてもお金が入ってくるのはありがたいことです。
仮に30世帯のマンションで、役員辞退者が毎年3名、協力金が月2,500円とすると、3名×2,500円×12ヶ月=90,000円が管理組合収入となります。管理費会計において1~2%程度の収入増になります。

区分所有者間における不公平感の解消

理事会役員を受任する区分所有者からの「なぜ◯◯◯号室の□□さんは役員をやってくれないのか」といった不満の声がなくなります。不満が残っていても辞退者からお金を徴収できるので納得感が生まれます。

区分所有者間の「気まずさ」の解消

どんな理由であれ(または理由がなくても)、特にマンションに居住する区分所有者が理事会役員を辞退するのは、マンション内で役員を引き受ける他の区分所有者と顔を合わせることを考えると少々気が引けるものです(もちろん厚顔無恥な人もいます笑)が、「お金を支払って管理組合の運営に貢献できる」という選択肢を提供することで「協力金によってちゃんと貢献したことになっている」という気持ちを持ってもらい、後ろめたさを持たずに住み続けることができます。
この「区分所有者による理事会役員の受任・辞退」に起因する「気まずさ」のようなものと取り除く効果が「理事会活動協力金制度」にはあります。
僕が「協力金の徴収は『ペナルティ』ではなく『管理組合の運営への貢献の方法に選択肢を増やしただけ』」と提起する理由はここにあります。

協力金制度は総会で否決されるのではないか?

理事会役員を引き受ける気がない(これまで役員を拒否し続けてきた)区分所有者にとっては「できれば無料で役員を辞退し続けたい」ため、反対者が続出するのではないか?100%聞かれます。
しかし、僕が携わったマンション管理組合で、この制度が総会で否決されたことはありません。

考えられる理由は3つです。
・1つ目は、ルールがフェアであることです。特に、外部に居住する区分所有者であっても「会議にオンラインで参加でも問題なければ、役員を引き受けても良い」という公平感が生まれ、賛成しやすい(反対しにくい)というものです。投資型マンション(すべての部屋がワンルームタイプ)や賃貸化が進む実需型マンションでもこのルールが否決になったことはありません。
・2つ目は、区分所有者に「自分に理事会役員の順番が回ってくるのは当分先だ」「回ってきたら引き受ければ良い」という楽観的な意識があるのではないか、つまり制度に実感がない、というものです。
・3つ目は、良くも悪くも「区分所有者の一定数が総会議案書を読まずに賛成(委任)してくれる」ということだと思います。

いずれにしても、このルールを制定するための条件である「総会での可決承認」のハードルは、皆さんが思うより低いのです。

理事会活動協力金制度の先(究極の選択とは)

さて、この「理事会活動協力金制度」。無事に導入した後で役員辞退者が続出した場合どうなるの?たまに聞かれます。
極端に「区分所有者の全員が協力金を支払い、役員を辞退するような事態」を想定しましょう。

僕の答えはズバリ「理事会という制度そのものを廃止して、外部のプロに運営してもらう」つまり外部管理者方式(第三者管理方式)へ移行することを強くおすすめします。僕が経営するマンション管理士(メルすみごこち事務所)で言うところの「プロ理事長派遣(理事長代行)」を提案します。

区分所有者全員が「お金で役員を辞退する」のであれば、自分たちで運営することは不可能ということになります。管理会社がいても、彼らは管理組合の運営をサポートする立場であり、サポートする対象である理事会の役員がいなければ(機能しなければ)管理業務が止まってしまいます。

区分所有者が「お金で役員を辞退する」ということは「他の誰かに理事会の運営を任せたい」ということでもあります。区分所有者の全員が「お金で運営を任せたい」のであれば、外部のプロに任せても良いわけです。
プロに理事長を委託するにはお金がかかりますが、その財源は「全員が管理費や修繕積立金の他に理事会活動協力金を支払うつもりがあるなら、もうお金が捻出できる状態にある」のも同然なのです。

実際に外部管理者(プロ理事長)を引き受けている都内のマンションの一つは、当時築3年目で「区分所有者がお金で理事長を雇う」という発想で採用されましたし、別の当時築45年目のマンションでは、ほとんどの区分所有者が「理事会活動協力金を支払ってでも役員は辞退したい」「協力金を支払うならプロの活用に当てることに賛成」となり、導入されています。

以上、3回連載の「理事会活動協力金制度」に関するコラムは以上です。
この制度を実現するために自分たちで考えても良いし、管理会社やマンション管理士に相談するもよし。
ぜひオススメの取り組みです。

※中間マージンを取らない管理会社:クローバーコミュニティはこちら
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