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危険な区分所有者が理事長へ立候補したらどうする?

前回・前々回のコラムでは、相談者が「マンションを良くしたい」という共通の目標を持ち、彼らが理事会への貢献を意識している事例を取り上げました。

※前回コラム「区分所有者の理事会への立候補を拒否するマンション管理会社(2)」はこちら

しかし、現実には、理事会(特に理事長)への立候補者の中には、管理組合を混乱させたり、運営を停滞させたりするケースが少なからず存在します。

例えば、何度も管理組合や管理会社を訴えたり、管理会社にモラハラを繰り返すような「モンスター区分所有者」、過去の理事会役員時代に管理組合を停滞させた経験のある区分所有者、修繕工事で施工業者からのリベートを狙うお金に汚い区分所有者、などが、以下のような動機で理事長に立候補することがあります。

  • 自分のエゴや利益を実現するための手段として

  • 自己顕示欲や自尊心を満たす手段として

  • 理想の管理組合を実現する手段として(実際にはその理想が現実とかけ離れていることが多い)

  • 修繕工事の際に施工業者を誘導してバックマージンを受け取る手段として

また、そこまでエゴがなくても、話しが長くて要領を得ず、理事会の進行が停滞するなどの「モンスターではないが理事長として著しく適性を欠く」というのもあるかもしれません。

立候補を拒否するための方法

過去2回のコラムに取り上げた相談者とは異なり、上述のような悪意ある理事長立候補者から管理組合の健全な運営を保つためには、立候補を拒否するための方法が必要であり、以下の方法が考えられます。

立候補者の要件を明記する
管理規約に「立候補者の要件」を明記します。反社会的勢力でないことは当然として、過去のトラブル歴がないことなどを要件に加えることが考えられます。また、立候補者について過去の行動やトラブルの記録を管理会社に調査してもらい、理事会で議論して立候補を認めるかどうかを判断するのも良いでしょう。ただし、理事や管理会社の「印象や感情」に基づいた、事実に基づかない判断は適切ではありません。客観的な評価基準を作っておき、それに基づき検討するなどが考えられます。

立候補者が理事長になってしまった後で問題になることを想定して取ることができる策

倫理規定の制定

倫理規定を明文化し、理事会役員、特に理事長に求められる行動規範を明示します。これに違反した場合は立候補を拒否できたり、後述のように解職・解任ができるようにします。倫理規定には、例えば、利益相反行為の禁止、業務上知り得た情報の漏洩禁止、誠実な職務遂行義務などを明文化しますが、最近アップデートされた標準管理規約に明文化されているので、より具体的に再アップデートするのもよいでしょう。

理事長の解職・解任手続き
問題を起こした理事長を理事会の決議で解職(理事長から平の理事へ降格)する手続きを、例えば「会合に出席した理事の過半数の賛成でできる」などと定めておきます。
また理事長を解任する(または平の理事へ降格後さらに理事を解任する)場合の手続きを、例えば「全理事の過半数の賛成でできる」などと定めておきます。
なお、理事長を解任する場合、解任に至った経緯や理由を明確に示し「印象や感情」で判断していないことを証明することが重要です。また、客観的な評価基準を設けておくことで解任の判断が容易になります。

少し前まで、理事長の解任は総会の決議が必要でしたが、最近の最高裁判例(※)を受けて、標準管理規約にも「理事会の決議で解任ができる」ようになりました。

役員再任の制限
同一人物が役員(特に理事長)が連続して就任することを制限します。例えば「同一人物が連続して役員に就任するのは最大2年(2期)までとし、その後は2年(2期)以上は立候補ができず、輪番も例外的にスキップする」といったルールせていが考えられます。


これらの方法を参考にしながら、管理組合の運営を健全に保つためのルールや対策を講じることが重要です。
(了)

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※最高裁平成29年12月18日判決
最高裁判所は「管理組合の規約にもとづき理事の互選により理事長を選任する、と定められている場合、理事長の職を解いて別の理事を理事長とすることも理事会に委ねる趣旨である」と判断しました。
つまり理事長の人選については理事会に委ねられているので、管理規約に解任に関するルールがはっきり書かれていなくても理事会の決議で解任できる、という意味です。
この判例の判断内容からすると、以下の要件を満たす場合に、理事会決議で理事長を解任できると考えられます。
①マンションの理事を組合員の中から総会で選出する規約がある
②管理規約上、理事長は理事の互選によって選任することになっている

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