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みやまnoしずく

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ことば書きの練習。 現代川柳・現代短歌を書き連ねています。(短歌多め)
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#現代短歌

現代短歌練習25

左手の薬指だけ見る癖が今もわたしの真ん中に在る

マニキュアがはみ出ず濡れた夜だからあなたの指に色を添えたい

パノラマをもっと伸ばしてふたりきり 好きと言えれば楽なのに、ねえ

この足が止まることのないようにため息を吐く白線を踏む

くちびるの薄皮を食む独り寝にシュリンクされたあなたの記憶

十年が長いねなんて言わないで貪欲だって自負はあるから



どんな関係かと問われれば、一日を共に過ごし

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現代短歌練習24

2018年短歌まとめ・5

カウンター決めたあの子は絹ごしにおぼろのようなハートを隠す

強かに机の間すり抜けて窓の向こうにばらまく本音

しょーもないこともない気もするけれど玉ねぎの芯を目指した勇気

飲み込んだ棘の色はさよならの響きに似てた雨後の木漏れ日

パンプスは硝子製ではないけれどわたしへ続く標にしたい

ヒーローになりたい君の真ん中でキラリと見えた承認欲求

真夜中に呼べば答える人の群

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現代短歌練習23

2018年短歌まとめ・4

加工した視界と言葉わたくしを現世に留める「いいね!」の通知

偽物の桜の花が落ちていて本物はもう雨の向こうへ

価値観の違いで離婚するのだし異動くらいはすんなりさせて

お誘いをはいと言えずにクリックの音でごまかす異動前日

決裁に名乗るものでもないですとここにいたこと全て消したい

よい人であるかどうかを仕事には持ち込まないで時計盤見る

距離感は安定剤の代替で他の言

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現代短歌練習22

2018年短歌まとめ・3

沈黙を守れぬ花火残像が扇ヶ浜のイルカに注ぐ

蝉時雨くぐり抜ければまた命稲穂の海を泳ぐトラクタ

濁流の中の煌めきその意味を指環の痕に聞けばいいのに

ねえちゃんと胸に手を当て聞いてみてあなたに捧ぐラ・カンパネッラ

待ってれば必ず星は落ちてくる願いが叶う保証はないが

ほつれ髪女々しさを剃る美容室ベリーショートで強がり増して

太陽に向かい何をば語るやら燃え尽きること

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現代短歌練習21

2018年短歌まとめ・2

人の死ももはや因数分解で求められずに受け入れられずに

他人事自分事への移ろいを加速できずに並ぶお通夜よ

容赦ない偽善の群れに追われ行く九月一日日はまだ長い

宿題とともに詰め込む溜め息にランドセルすら我を裏切る

花すらも置かれず君は旅立った座席表から消された名前

正解を求め戦う人の手に捩じ込む誇りそして埃と

高速の路肩に黒い靴下が迷いくたびれ死んでいく春

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現代短歌練習20

2018年短歌まとめ・1

嘘つきが子どもみたいに笑うから何度も角を曲がる一日

飛び出したその瞬間に分かるやろ世界を作るカラーコードが

病から食細くなり死に到る死に到るため食細くなる

刃こぼれのない言葉だけ通過する泣く術忘れて見る砂嵐

真夜中の合わせ鏡は饒舌に悪口ばかり我に向ける

悔しさを舐めとる舌の柔らかき蛇口の栓をまた弛めけり

ジグザグに歩き続けたはずなのにカラーコーンはまだ倒れな

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現代短歌練習19

枝分かれ辿るつもりがぷつりってあってはならぬ処女の髪には

大切に守り続けたキューティクル老いの津波は満潮狙い

目的はここじゃなかったはずなのに半裸の女銀糸囚われ

ぬばたまの夜は雲隠れ浴室の鏡も隠す生え際の白

わずかでも人工色素注いだら処女は名乗れぬ明日は月曜

閉経の誘い断り逃げ回りひとりでできるヘナ塗りたくれ

首すじの赤いぽっちを押してみなかゆみ伴い今日が始まる

太陽は残酷非道万物に

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現代短歌練習18

さん付けの位置が変わってビッグバンあなた吸い込むブラックホール

優しさの皮を被った悪人が百合の根っ子を押し付けてきた

警察に捕まるよって象が言う明日はまともに生きてごらんよ

マスク下表情筋が蠢いた笑っていれば普通でいれる

朝靄に君のリストが花開き鍵盤弾く生きてる証

鳩尾はここですそうよここだから狙い外さずサイダーかけて

逃げようと鏡のなかでもがいてるわたしはなんて美しかろう

もう二度

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現代短歌練習17

2.26事件を想う

睦月末、御国の為と流し血は気付けば我の股より流る

灰色の空にビラ舞い東京は現実に帰し棺桶を喚ぶ

詰将棋若人贄に軍政へ勇み行けよと老害喚く

詰襟の群れの向こうに過る影氷雨の線は無情に降りて

大陸で底冷えせぬか気にかかり両手擦りて暖を届けん

見てごらん白木の箱のふたの裏白髪の生えし僕らの姿

幸福の寝屋が壊れし音がする夢見るときは終わりのようだ

嬰児の命叫びし必死さに

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現代短歌練習16

物言わぬ画面の向こうため息を感じて知らぬふりする夜更け

怠けずに働きなさい分かってるけれど響かぬ上面の笑み

心臓の内側に棲むヤマアラシ日曜の夜もぞりと動く

骨折をすれば信じて、いやいっそ次は死ぬから忘れておくれ

あと八日削る命の残高を次の生へと持ち越せたなら

白線を踏む遊びをば今してて落ちたら終わり火葬の許可を

深夜目を覚まし母の香手繰り寄せ早く私を迎えに来てよ

やかんから漏れる嗚咽

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現代短歌練習15

日本語の意味分からずに口ずさむへいじゅーどって共通語かも

ムダ毛処理する間を惜しみスマホ越し君の連絡待つ午後八時

「休みます」何度悲鳴を上げたならこの心臓は止まるのでしょう

必要とされる意味とかとりあえずカプセル詰めて飲み干し下す

ハンカチを落としたからね振り向いて順繰りに来るこころのひずみ

ざらついた部屋の片隅ルノワール死体役にはわたしがなろう

しゃあないよ脳の暴走バグですし死ななあ

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現代短歌練習14

涙落つ音に視線を持ち上げて梅雨入りを知るわたしはひとり

ハイターでわたしは過去を染み抜きす嬉しいことも悲しいことも

今日もまた足元ばかり見てるから登り下りを気付かず進む

この辺りそうこの辺り羽がありSNSにピン止めされる

嘘なんてつくよな人じゃないことをコンクリの壁冷たさに知る

おやすみに憎しみ込めて囁いたジンギスカンの夢を見ようか

縄かける鴨居ない部屋午前四時うたせは命狩りに海へと(

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現代短歌練習13

つま先を揃えた途端怖くなる余命残高一向減らぬ

わたしではないと言い張る鏡前強さを作る手つきは慣れて

過ちを赦す弱さが欲しかったふたりの鍵は意味をなくした

あの日から十月十日の同居経て命の膜を蹴破る君よ            (さくちゃんさんの記事に触れて)

近付いて離れて何度繰り返しあなたにピント合わぬ老眼

君消えてぽっかり空いた穴のこと再来週には忘れるのだろ

ま四角の枠の真ん中笑う君

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現代短歌練習12

電話越しおまんのことを睨んでるホンマに嫌いホンマに嫌い

人混みに飲まれた我は消化されやがて排泄され還りゆく

墓石に潰されり我が母の声怨嗟を糧に我は紡がれ

守りたいもの増えるたび「好き」と「大事」の違い自問す

マンモスも避けて通ったわたくしの永久凍土立ち入り禁止

雪溶けて居場所なくしたふきのとう花咲く前に咀嚼しようか

結構溜め込んだなあ。

「おまん」は方言で「あなた」です。ここには載っ

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