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「トムとジェリー」で1番好きなエピソード、『夢と消えた百万ドル』のなかのトムの人間くささ(猫だけど)


 御多分に漏れず、家にいる時間の多いみやまるです。時差出勤やテレワークで家にいる時間も増え、一人暮らしの部屋でのんびりと暮らしております。な~んか、ボケーっと楽しめる映画とかないかなあ…と思って思いついたのが、幼少期から愛してやまない「トムとジェリー」である。初期の作品の多くがパブリック・ドメイン(著作権失効)になっているので、ネットで容易に見ることが可能だ。
 今回はその「トムジェリ」の中でも一番好きなエピソードである『夢と消えた百万ドル』を紹介したい。もはやこのエピソードに「トムジェリ」の素晴らしさが集約されているといっても過言ではないだろう。



 あらすじはこうだ。相変わらずネズミのジェリーをいじめて遊んでいる猫、トムのもとに伯母が亡くなったという電報が届く。肩を落としたのも束の間、ある一文が目に留まる。「あなたに遺産が相続されました」。トムは飛んで跳ねて水槽の魚にキスするほどの喜びぶり。不思議に思ったジェリーも電報を覗くと、こちらも飛んで跳ねてトムを蹴っ飛ばしての大喜び。すぐさまジェリーを追いかけるトムに、「ほらね」と言わんばかりに電報をみせびらかすジェリー。電報には相続の条件に「生き物に害を加えないこと」と記されていた。鬼籍に入ったトムの伯母は彼がジェリーをいじめていたことを知っていたのかもしれない。

EVEN A MOUSE
(たとえネズミでも)

 なんて末文に添えている。極上のゴージャスライフを楽しもうとするトムに、暗雲が立ち込める。「たとえネズミでも」を後ろ盾にしたジェリーがどんどんちょっかいを出してくるようになる。

 やはりまず「不謹慎」なところが良い。始まりからして遺産という「カネ」だし、トムの目の上のたんこぶとなったジェリーを「消す」べく、時にはわざわざ火事を起こしてどさくさにまぎれて転落死させようとしたりする。ほんとに、♪「仲良く」ケンカしな♪ってレベルか?ここまでやるの?というところまでやる。もちろんジェリーもジェリーで、何度殺されてもあらゆる物理法則を無視して、光の速さで復活するのだけど。
 ディズニーが洗礼された「優等生」な感じに対して、「トムジェリ」を作ったハンナ・バーベラ社は俗っぽい「悪ガキ」なテイストの作品である。ディズニーも嫌いじゃないが、人間マジメばかりじゃ息がつまる。せっかく動物のコメディアニメなんだから、人間の俳優がやることは許されないくらい食べ物と友達をソマツにあつかってほしいものだ。特にこの『夢と消えた百万ドル』はそれが徹底されているように思う。

 ほかにも美しいオールドアメリカンな風景、それを引き立てる音楽、キャラクターの喜怒哀楽の豊かさ、おいしそうな食べ物の数々など、ほかのエピソードにも通じる「トムジェリ」のエッセンスがふんだんに使用されているが、最後かつ最大の魅力はトムの人間くささ(猫だけど)だろう。1944年につくられた短編アニメにネタバレもなにもないだろうから、オチを書いてしまうが、やりたい放題やるジェリーにとうとう堪忍袋の緒が切れ、「たとえネズミでも」が書かれた電報をびりびりにちぎり、ジェリーをボコボコにする。ひとしきり暴れたところで、ジェリーのしっぽをつまみながら、感情に任せ大金を失った事実に呆然自失とするが…、最後には声高にこう叫ぶ。

 But I’m happy!

 ご存じの通りトムはいつも、ジェリーに負け続き。ちょっと我慢して、おとなしく大金とともに生活してれば…なんてのは我々傍観者の余計な心配に過ぎない。そしてカネなんかよりストレスのない人生を歩みたい、たとえそれが失敗ばかりでも。皆さんもスラップスティックさのウラに隠れた、そうしたトムの味わい深い生き方に共感しつつ、「トムジェリ」で笑い転げてみてください。

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