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ファームチーム、かく戦えり。/田口壮『プロ野球・二軍の謎』

(初出:旧ブログ2018/10/11)

 タイトルを読んで、「あ、これ面白そう」と思って買った本。著者はイチローと名コンビを組んだあの田口。章立てはこんな感じ。

はじめに
第一章:プロ野球の二軍はなにをしているのか
→リーグ構成、支配下枠などの基本データの紹介
第二章:日本の二軍とアメリカのマイナー
→日米でどこが違うかを野球文化含めた様々な視点で比較
第三章:二軍の試合が100倍楽しくなる?!観戦ガイド
→ウエスタン各球場の雰囲気のガイド
第四章:新人監督のマンスリー・ダイアリー
→2016シーズンを細かく振り返る
第五章:二軍監督という仕事
→「おとなしい現代っ子」と世代間をどう埋めて指導するか
おわりに


 ウエスタンリーグこそ観戦したことないが、イースタンなら高校時代から観戦している自分にとって、特に大好きな松井稼頭央が西武2軍監督就任か?というタイミングだったのでとてもタイムリーかつ、知りたいことが知れる本だった。2軍はセパではなく、東西に分けてるというような基礎的な部分に始まって、アメリカのマイナーオプションに至るまで、じっくりと「2軍学」を勉強できる。そしてライターには書けない、現場の人間だからこそ書ける、オリックスをはじめとするプロ野球の内情を垣間見ることが可能だ。特に第四章では吉田正尚・大城滉二・小島脩平・奥浪鏡(…ノーコメント)ら、猛牛たちの成長が実名で読めるのはかなり貴重だ。そして監督であるまた田口も田口で日々「戦って」いるんだなと思う本だった。
田口の関西人らしい小ボケや人情エピソードがこまごまあってすいすい読める。1軍しか見ない野球好きは「2軍も見たい」と思うようになるだろうし、自分のような2軍観戦者も一貫した勝利至上主義とはまた違う「1軍ありきの」2軍というチームの枠組みを、そもそも野球を知らない人も、いかに野球が「適材適所」のスポーツか、細かい人事の置き方で
変わってくるスポーツかがわかると思う。
 田口の本はほかにもあるようなので是非読んでみたい。そういえば同じオリックス黄金戦士かつ日米プレー経験のある長谷川滋利の本も面白かった。しかしそうなるとやはり気になるのはイチローだ。彼が筆を認めたときどんな本になるのか想像もつかない。案外、野球とは全く関係ない幻想純文学とかだったりして。

●気になった箇所
(阪神の鳴尾浜球場について)センターの真後ろを走る阪神高速5号線を通過するトラックドライバーがおそらく「がんばれー」の気持ちを込めて、フォンフォン!とクラクションを鳴らしてくれることもあります。(p105-106)
阪神というチームがいかに愛されてるかの証左だと思う。素晴らしい光景だ。JRも新幹線がナゴヤ球場やロッテ浦和を通過するときやるべき…というワケにはいかないか。

 オーラが出るか出ないかという、一瞬の「間」が日本人にはぴったり合うから、野球は面白いと言ってくださる方が多いのだと。僕は思っています。(p113)
これは赤瀬川原平が言ってた「野球は(1対1の間から生まれているの)相撲に似ている」と指摘したのに近いかも。だからこそ「間延び」しているように感じる人もいるのだろうし。

 「どんなにきつい練習でもうれしい」と思えるドM要素と「弱い自分をガンガン追い込むのが楽しい」などと思えるドS要素を併せ持つ人が、もっともプロとして成功しやすいのではないでしょうか。(p183-184)
 最後に野球に限った話じゃない、愚痴に近いかもしれないけど、やったら「SかMか論」語る人多くね?だいたい表裏一体じゃないと思うし、自称する人の多くが団鬼六的加虐被虐世界とは無縁だと思うし…。

#野球 #新書 #オリックス

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