見出し画像

教養としてのプロレス

(初出:旧ブログ2016/11/05)

 プロレスに関してはほとんど門外漢で、自分とプロレスとの関わりといえば久米川でアントニオ猪木を見たこと(選挙応援)がある程度だが、不思議と仲のいい友達や尊敬する作家にプロレス好きが多い。プロレスの知識や歴史や観戦術を教えてくれる本かと思ったらちょっと違った。タイトルを自分の感想に即して言い換えるなら、『哲学・現代思想としてのプロレス的思考』という感じかな。”木島佳苗”、”AKB”、”SNS”、”『あまちゃん』”というここ10年代の社会現象を<プロレスから学んだこと>と照らし合わせて、掘り下げていく。

 特に印象に残ったのは第4章。80年代後半から90年代における『週刊プロレス』と『ゴング』という二つのプロレス誌が牽引した「活字プロレス全盛期」の話と木島某の話を並行して語る章だが、<その試合をどう解釈するか、どういう意味があるのか、深読みと想像する楽しみ方。(中略)リング上より、そこで行われたことを考えるかという、活字プロレスの楽しみ方>という文は活字とスポーツの姿を端的に表した一言と言っても、決して言い過ぎではないと思う。

 著者であるプチ鹿島は読むまで名前しか知らなかったが、ディープにプロレスを愛し、プロレスから離れた場所でもプロレスのことを考えているんだろうなと想像できる。著者のプロレス愛の結晶が『教養としてのプロレス』という一冊を作ったのだろう。この本の存在を教えてくれたのは仲の良いプロレス好きの後輩だが、彼が以前「あらゆる世の中の出来事は、すべてプロレスの要素を持っている」と言っていたのを思い出し、読んだ後大いに納得した。

#プロレス #新書

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?