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宝塚歌劇雑文集

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宝塚歌劇関連の雑文
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#宙組

宝塚宙組『カルト・ワイン』

 観劇は、行先の分からないクルマに乗るようなもの。初めての演出家の作品ともなれば、そのドキドキ感はなおさらだ。  でも、ドライバーの運転技術が確かかどうかは、はじめの数分でたいてい分かる。この『カルト・ワイン』も、何の心配もなく、舞台上で起こることを観ていればいいことがすぐに分かった。あらかじめ、行き先を示すヒントが出され、語り口は軽快。テンポもいい。音楽もいい。芝居も見せる。一気に物語の世界に引き込まれ、痛快なラストにうならされる快作だった。  作・演出は栗田優香さん

タカラヅカのショーはドレスで決まる▽宝塚宙組『Délicieux(デリシュー)!-甘美なる巴里-』

 ひー。楽しかった。  よく分からない幸せ感に満たされて、観劇帰りにデパ地下でお菓子を山のように買い込んでしまった。タカラヅカのショーって本当に人生のデザートだよなあ、なんてしみじみ思いながら。  不要不急とはいえないけれど、こういう気晴らしや楽しみがなかったら、いつか息ができなくなってしまうかもしれない。宙組の『Délicieux(デリシュー)!-甘美なる巴里-』は、つつがなく続いていく日々に欠かせない「デザート」であり「気晴らし」だったと、パンデミックを知ったいま、実感し

宝塚宙組『WEST SIDE STORY』*絶望の中の希望

2018年1月21日 15時 東京国際フォーラム ホールC ■ダンスがストーリーを動かす音楽を聴いただけで胸が高鳴る。超絶クールなその音楽に合わせて、舞台を駆けていくジェッツとシャークス。考えるより先に、うわあーと心が叫んでいる。歌や演出で引っ張っていくタイプのミュージカルとは違う、じっとしていられない、この感じ。これは本当に見ないとわからない。人を動かすことのできるミュージカルだと思う。 と、わかったふうなことを書いてしまったけど(笑)、実をいうと『WEST SIDE