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「手まり」

おばあちゃんが
ひと針ひとはり縫った
手作りの手まり
色んな色を使って
可愛らしい模様が描かれている

もう必要がないんだよ
こんなに沢山あっても困るから
持って帰ってくれないか
スーパーのビニール袋に
次々と入れられ
大量の手まりたちは
無造作にひとまとめ

おじいちゃんちから
持ち帰られたまりの山から
りんごくらいのサイズのそれを
ひとつ
一緒に連れてきた

よく見ると
ちょっと歪んでいる
表面は糸の感触がすごくあって
手でギュッとすると
中の芯がミシミシと
音を立てる
ソファの端っこに
何気なく置いてあると
小柄だったおばあちゃんが
そこに座っているみたい

おばあちゃんみたいな手まりで
遊ぶ娘
お腹にいる時に
空へ旅立ったから
会ったことはないけれど
一緒にいるみたいだね

おばあちゃんの生きた証
いつも側に置く我が子

手まりはこうして
ころころころと転がって
継承されていく



和裁の仕事をしていたおばあちゃんはとても器用な人でした。

趣味で手まりを作っていたみたいなのですが亡くなった後に大量のそれの処分に困ったおじいちゃんが、母にまとめて持たせたらしく実家に行ったときにその中からひとつ娘が選んで我が家へ持ち帰って来ました。


おばあちゃんは私が娘を妊娠中、臨月の時に亡くなり娘の顔を見せてあげることができませんでした。

合わせてあげたかったなあ

そんな思いが未だに残っていますが手まりを気に入って側に置く娘を見ているとそれが昇華されるような気持ちになりました。

これからも新しいおもちゃと同じくらい昔からあるものも大事にしてほしいです。

そんなおばあちゃんと手まりと娘の詩でした。









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