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#読書感想文〜常識のない喫茶店

「常識のない喫茶店」僕のマリ・著
(柏書房株式会社・2021)

著者の「僕のマリ」さんは、1992年生まれ、同人誌で活動する中で、お声がかかって商業誌へ。

この本は、柏書房株式会社の公式note「かしわもち」で2020年から連載されていたエッセイをまとめたものです。

なるほど、noteで書かれていたのですね。

私が、初めて「僕のマリ」さんの作品に触れたのは、彼女の日記集でした。

その時の感想は、こちらの記事()で、書いています。

その日記が、何とも読み心地が良かったので、話題の作品のこちらも、楽しみにしていたのですが。

結論からいうと、この本を初めに読んでいたら、私は、この作者の作品を記事にしなかっただろう、そして、重ねて、他の作品を読むこともなかったかもしれない、ということです。

この本は、日記とは、ずいぶんテイストが変わっていて、私には、ちょっと味付けが濃すぎるかな、と感じました。

ご自身が働かれていた、ちょっと変わった喫茶店の日常を面白く書かれているのですが、少々語気が強めで、ウケるように狙って書いている印象を受けました。

もちろん、それで、実際に注目されて、この作品はNHKのラジオドラマになったそうですので、商業的には大成功。

だから、私が、日記の方が好きというだけで、しっかりと書き分けができる、作家さんなのだと思います。

以前の記事にも書いたのですが、私としては、この作家さんの、何の味付けもしていない、淡々とした日記が、とても良かったのです。

例えるなら、この本は、お客さんのオーダーで、誰にでも美味しく食べてもらえるように、喫茶店で作ったお料理で、万能調味料もふんだんに使っている。

一方で、彼女の日記集は、完全に家庭料理で、日常の食卓に出されるお料理、時間をかけてダシを取ったんだけど、ちょっと味は薄めにしてます、悪しからず。

みたいな感じです。

仕方ないことですが、商業ベースに乗せようとすると、どうしても売れることにフォーカスされてしまいますね。

ただ、この本の後半は書き下ろしで、職場の先輩への思いや、自分のことが、いくらか書かれていて、そこの部分は良かったです。

なので、この本を読んで「ん?」と思われた方は、「僕のマリ」さんの日記をこそ、読んでほしいなと思います。

逆に、この本が、面白くて大好き!という方には、日記はつまらないかもしれない。

私は、図らずも日記から入ったのが、良かったけど、初めの出会いって、結構、重要ですね。


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