おしゃれ番長、ストールを買う
ポット、クロス、ミラノ、スヌード、ピッティ、ウィンディ、ボリューム、ニューヨーク……。
この文字列を見てピンときた人は挙手しなさい。正解者には私からおしゃれ上級者の称号を与えよう。ちなみに称号を与える立場にいるおしゃれ番長こと私は、google先生の知能をカンニングし額に脂汗を浮かべながらこれらのカタカナを打ち込んだ。
さて、私のエッセイ読者であるおしゃれなみなさまならそろそろ正解がわかっただろう。
これらのカタカナたちは「ストールの巻き方」の名称である。
先日、うまれてはじめてストールを購入した。いままでは、巻かずとも磁石でぺちんと留められるマフラーを使っていた。しかし胸元あたりでクロスさせたマフラーを磁石で留める構造上、顎下がスキだらけの状態になってしまい、首すべてを布で覆うことが難しかったのだ。今年は暖冬とはいえ冬はさむい。それに首はみぞおちに次ぐ私の弱点でもある。
街中を歩くお姉さんに目を向けると、絨毯のような大きい布を首元に巻いているのが観測できた。うらやましい。私もあっかい布を気がすむまで首にぐるぐる巻きつけてほかほかなきもちで外を歩きたい。首を完璧に守ることで背後からの敵襲にも備えたい。この願いを叶えるために、とうとう私はストールデビューしたというわけだ。
しかしストールを手に入れたまではよかったが、肝心な巻き方がわからない。ストールを巻いたお姉さんを脳内に召喚し、見よう見まねで巻いてみたものの、カーテンに巻き付いて遊ぶ幼稚園児のような姿にしかなれない。ただ布を首に巻けばどうにかなると思っていたのに、どうやらそうではないらしい。私は絶望した。
何を隠そう私は普通のマフラーを使っていた時でさえいい感じの巻き方がよくわからず、二つ折りにしてできた輪っか部分にマフラーの両端をつっこむ巻き方でどうにか生きてきた人間なのだ。
そうだ。だからこそ私は磁石でペチンと留められるマフラーばっかり使って寒さに震えていたのだ。そのことをのんきにきれいさっぱり忘れ、マフラーよりもさらに大きい布をうまく巻き付けることができると、どうして思ってしまったのか?私は無意識のうちに己の布を巻く能力を過信し、自惚れていたのだ。
しかし手元にはすでに購入してしまったストールがある。薄ピンク色のかわいいチェックのストールが、哀れな私を見つめている。うまく巻けないという理由で、この子のことをタンスに閉じ込めてしまってよいのか?
私は決心した。ストールの巻き方を覚えて、ストールを使いこなせるようになり、おしゃれ番長になるしかないと。
こうして冒頭のカタカナたち…ストールの巻き方を調べ名称を列挙するに至ったと言うわけだ。
おしゃれ番長になった私は今「ボリューム巻き」とやらを日々がんばって巻いている。だが、公式の説明通りに巻くとなぜか首が苦しくなる上になぜかぐちゃぐちゃになるため、最近は我流で巻き始めている。
正しい巻き方ではないが、まあぐるぐるカーテン状態を脱することはできたので、よしとしようじゃないか。それに、我流で巻いてる方がなんだかおしゃれっぽい気がしなくもないだろう。私はおしゃれ番長になったのだから、きっとこの巻き方がおしゃれなのだ。
「型を破るのは型を覚えてから」?
おしゃれ番長に逆らうひとに、与えるおしゃれ称号はありません。
退場してください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?