パリの公園にて

今から数年前、ひとりでパリに遊びに行っていた。
公園のベンチでひと休みしながら、私はいつものようにノートにペンを走らせていた。
足癖が悪いので恥ずかしいが、小さなノートを支えるために片足のくるぶしにある骨をもう一方の膝上に乗せがちである。
そのときも決してかわいくない姿勢で私はノートに目をやり文章を書いていた。

すると突然目の前に人影を感じたのでそちらの方に顔を向けると、にっこりとおじいさんがこちらを向いて立っていた。

手元を見るとおじいさんも私と同じようにノートにペンを走らせている。
そしてまっすぐこちらを向いている。
なんだろうと不思議に思いながらも愛想笑いをしたあとそのまま私はまた文章の続きを書き出した。

書き出したのと同じくらいに、おじいさんがこちらへ歩み寄り1枚の紙を差し出してきた。
そこには下を向いた私の姿が描かれていた。

おじいさんは私が身につけていた花火みたいな雪の結晶みたいなピアスを褒めて、これを君にあげると似顔絵をプレゼントしてくれた。
彼はミシェルといい、マレ地区のアパルトマンに住んでいるみたいだ。
私たちが出会ったこのテンプル公園にはよく散歩に来るらしい。
簡単に会話をしたら、彼はバゲットを買いに行かなきゃと言ってまた同じような優しい笑顔で立ち去った。

人に自分のことを描いてもらう機会なんてそれが初めてだったので、とても大切な思い出である。

彼は無印の筆ペンを気に入って使っていた。
私のことも筆ペンでさらりと描いてくれた。

パリのこういう出会いが私は愛おしくなるくらいに好きだ。早く外へ向かいたいなぁ!

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