わたし「スー女」?

「〇〇女子」という呼び名は、女性をバカにする響きを感じて好きになれない。その最たるものが、相撲が好きな女性をあらわす「スー女」だった。相撲を「スー」にしてしまうすわりの悪さ。これはさすがにすぐに消えるだろうと思っていたが、相撲人気の過熱と不祥事あれこれで、すっかりワイドショーの常連ワードになってしまった。

私はというと、SNSで力士の情報を知って相撲を見始めてハマった、バチバチのスー女だ。毎場所の観戦を楽しみにするようになり5年は経つが、「今場所の成績がこうだから来場所の番付は……」という番付の仕組みなんかはいまだによくわからず、「貴景勝と大栄翔は巡業先でいちゃいちゃするくらい仲良し」とか言ってしまうクチだ。でも、大相撲のない月は元気がなくなるくらい相撲が好き。何よりも、心技体を鍛え上げ、すべてを土俵にかける力士を本気でリスペクトしている。

以前、年下の男性編集者に「相撲のどこが面白いんですか?」と聞かれ、「高校野球と同じ感じですかね。高校野球は球児が野球に青春をかける姿を見せてもらっている。相撲は中学を卒業してすぐに入門する人もいるし、人生をかける姿を見せてもらっている感じです」と答え、困惑させてしまった。

さらに「誰が好きなんですか?」と聞かれたので、「ひいきの力士はいるにはいるんですが、誰のファンというわけではなくて、全員を応援している感じ」と答え、その話題は終了した。相撲に熱をあげるスー女としては、「寝顔がカワイイから千代丸!」くらい言わなければならなかった。

相撲は10秒に満たない取り組みが多く、四股を踏んだり力水をつけてもらったりという一連の動作を経て、また次の取り組みが行われる。そのため用事をしながら行司の声をめどに手を止めて観ることができ、主婦で在宅ワーカーの私でもテレビ観戦がしやすい。

会場に足を運べば、お酒と焼き鳥を手に「遠藤――!」などと掛け声をかけ、「年とったら大きな声もよう出ぇへんわ」と周りのお客さんと笑い合うこともできる。力士がぶつかり合う重く鈍い音の迫力はもちろん、結びの一番が行われるときの異様な熱気や横綱が発するオーラはやはり会場でしか体感できない。

相撲を継続して観ていると、掛け声を送っていた力士が引退して親方になり、会場の警備にあたっているというお楽しみもある。タイミングがよければ声をかけて写真をとってもらったり、握手をしてもらったりすることも可能だ。その掌の大きいこと、分厚いこと。掌まで鍛え上げてきた日々を思い、すっかり涙腺のゆるくなったスー女は会場のすみでひとり涙するのだ。


#エッセイ #〇〇女子 #相撲 #スー女

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