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【「さーよ」の意味〜接尾辞3選〜】 宮古島の方言その3

 みなさんこんにちは!前回は『みゃーくふつ(宮古方言)講座その2 【若者が良く使う方言5選】』を紹介し、TwitterやFacebookで宮古島の高校生や宮古ファンの方からコメントが寄せられるなど、大好評でした👏(コメントやシェアありがとうございました!!)
 さて、今回は、【接尾語方言3選】をご紹介します。と、その前に、接尾語とは何かについてご説明します!

0. 接尾辞(せつびじ)とは

 接尾語とは、ある単語の語尾について、意味を付け加えたり、文法上の働きを変えたりするものの事を言います。今回の記事でご紹介する接尾語は全て、意味を付け加えるはたらきをするものです。
 文章で説明されてもピント来ない方もいらっしゃると思いますので、さっそく見ていきましょう!今回もイメージが湧きやすいように例文を多用していきますので、宮古方言マスターに向けて頑張ってください✨

1. さーよ:事実や状態の説明

 「さーよ」無しでは宮古島の方言は語れません。裏を返せば、「さーよ」さえマスターしてしまえばあなたはもう宮古人です!それほど「さーよ」は日常会話で多用されています。人によっては「さーね」を使ったりもしますが、意味は同じです。(「分からない」と言う意味の「さーね🤷🏻」ではありません笑) 
 「さーよ」「さーね」は、標準語でいう「〜なの」「〜のね」「〜なのね」に当てはまります。つまり、事実や状態を説明するときに使われます。言語化されると分かりにくいですが、日常の友人との会話を思い浮かべてください。

❶バイトでの出来事を話すとき「昨日バイトだったのね。でも〜」
❷学校での出来事を話すとき 「昨日学校行った。そのときに〜」
❸自分の事について話すとき 「私今大学生なのね。だけど〜」

 以上のように、会話の中では「〜なの」「〜のね」「〜なのね」と言う表現が頻繁に使われている事に気づくでしょう。宮古方言ではこれが「さーよ」「さーね」になります。上記のフレーズを宮古方言verでみてみましょう。

❶バイトでの出来事を話すとき「昨日バイトだったさーよ。でもさ〜」
❷学校での出来事を話すとき 「昨日学校行ったさーよ。そのときにさ〜」
❸自分の事について話すとき 「○○○今大学生さーね。だけどさ〜」

 以上のようになります。もうお気づきかもしれませんが、「でもさ〜」「そのときに〜」「だけどさ〜」とあるように、事実や状態を説明した後に本題を話しますよね。つまり、「さーよ」「さーね」を使う場合、その後にメインとなる文章が続きます。「さーよ」で会話を終わらせることは不自然です。きっとこうなります↓
A「昨日買い物行ったさーよ」
B「…で??」

 余談ですが、ここで豆知識を2つご紹介します!

豆知識①『接続詞や副詞にも「さ」をつけるとネイティブっぽい』
 上の例文でもみたように、「そしたら」「そのときに」「だけど」など、宮古方言を話すときは接続詞や副詞にも「さ」をつけるとネイティブっぽくなります!

豆知識②『女性の場合、一人称は「私」ではなく「名前」』
 これは沖縄本島でも共通の文化なのですが、女性が自分のことを称する際、「私」ではなく自分の名前を使うのが一般的です。例文❸を用いると、筆者の場合は以下のようになります。
 「ありさ今大学生さーよ。だけどさ〜」

2. わけ/わけさ:事実や状態の説明

 「さーよ」と同じ使い方をされるのが「わけ」です。こちらも事実や状態を説明するときに使われ、その後にメインとなる文章が来ます。標準語でもごく稀に「わけ」が使われているのを聞きますが、宮古島・沖縄本島ではより使用頻度が高いです。「さーよ」と同じように使われているので、こちらも習得必須です!「わけさ」も同じ意味で使われ、これも完全に個人の気分です。1で見た例文をそのまま用いて解説します。

標準語
❶バイトでの出来事を話すとき「昨日バイトだったのね。でも〜」
❷学校での出来事を話すとき 「昨日学校行った。そのときに〜」
❸自分の事について話すとき 「私今大学生なのね。だけど〜」

宮古方言
❶バイトでの出来事を話すとき「昨日バイトだったわけ。でも〜」
❷学校での出来事を話すとき 「昨日学校行ったわけさ。そのときに〜」
❸自分の事について話すとき 「○○○今大学生だわけさ。だけど〜」

 あれ…?なんか変なのいるぞ…?と混乱した方もいるでしょう。実はただ単純に「わけ」をつければいいというわけではないんです(ダジャレ笑)。では「わけ」と「だわけ」の違いは一体なんでしょうか。答えは簡単です。動詞のうしろには「わけ」、名詞や形容詞のうしろには「だわけ」がつきます。いくつか例文を見てみましょう。

動詞の時=わけ(さ)
❹明日ぱいながま行くわけ(さ)。(ぱいながま=宮古島にあるビーチの名前)
 行く(動詞)+わけ(さ)
❺先週おばあの畑手伝ったわけ(さ)。
 手伝った(動詞)+わけ(さ)
 ※過去形でも関係なくつけられます

名詞や形容詞の時=だわけ(さ)
❻明日学校だわけ(さ)。
 学校(名詞)+だわけ(さ)
❼下地島の夕日めっちゃ綺麗だわけ(さ)。
 綺麗(形容詞)+だわけ(さ)
 ※ちなみに「17エンド」こと旧下地島空港から見える夕日は本当に絶景なので是非足を運んでみてください✨

3. さ/ってば:メインで伝えたい出来事

 「さーよ」や「わけ」のうしろにはメインの文章が続く事を解説してきましたが、次はそのメインの文章の接尾語について解説します。こちらは標準語でいう「〜なんだ」「〜なんだよね」「〜だよ」に当てはまります。まずは標準語verで
❶〜❸の例文にメインの文章を付け加えてみてみましょう。

標準語
❶バイトでの出来事を話すとき
 「昨日バイトだったのね。でもお客さん全然来なくて暇だったんだよね
❷学校での出来事を話すとき 
 「昨日学校行ったの。そのときにキジムナーに会ったんだよ
  ※キジムナー=ガジュマルの樹に住んでいるとされる沖縄の精霊
❸自分の事について話すとき 
「私今大学生なのね。だけどコロナで全然キャンパス通えてないんだ

宮古方言
❶バイトでの出来事を話すとき
 「昨日バイトだったさーよ。でもお客さん全然来なくて暇だったさ〜
❷学校での出来事を話すとき 
 「昨日学校行ったわけさ。そのときにキジムナーに会ったってば
❸自分の事について話すとき 
「○○今大学生だわけ。だけどコロナで全然キャンパス通えてない

 「ってば」と聞くと「ナルトかよ」と思った方も多いのではないでしょうか?(笑)実は宮古島と沖縄本島では普通に使われている表現です。
 メインの文章であれば「さ」と「ってば」のいずれでも問題ありませんが、言語化するには難しいほどの微妙なニュアンスの違いがあるように思います。強いて言語化するのであれば、「ってば」は、少しだけ自慢げに話す際に使用されることが多いかもしれません。(キジムナーに会えたら自慢しますよね…?笑)しかし自慢事ではない場合でも使用できますので、一概には言えません。島人は独特の感性と感覚で使い分けています。

4. まとめ

●事実や状態を説明したいときには「さーよ/さーね/わけ/だわけ
 さーよ=品詞に関係なく何にでもつけられる万能な接尾語
  わけ=動詞のうしろ
 だわけ=名詞や形容詞のうしろ

●それに続くメインの文章には「さ/ってば
 基本的に使い分けは個人の好みと感覚だが、自慢できる要素があれば「ってば」が好ましい

5. さいごに

 【接尾辞3選】いかがでしたでしょうか?思ったよりも文法チックな説明になってしまいましたが、なんとなくイメージは湧きましたでしょうか?当初は5選の予定でしたが、説明が長くなってしまったので3選に変更いたしました。さて、接尾語に関しては疑問系もご紹介したいものがいくつかありますので、次回も【接尾辞3選〜第2弾〜】をご紹介したいと思います!お楽しみに〜〜✨


おことわり
本記事は筆者が実際に話していた言葉や見聞きした事に基づいて作成しております。専門家による監修等は行われておりませんので、学術論文の執筆や学術研究を目的とする本記事の引用、参照等は推奨出来かねます。予めご了承ください。

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