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遠い記憶 第二話

微かな、記憶をたどり、

私の目の奥に、残る映像は、

角部屋の、窓越しに見える行き交う、人達。

棚に並ぶ、微かなタバコの匂い。

子供らしく、大きな声で騒ぐ事や、泣く事は無かった様に思う。

むしろ、

大人しく、人見知りであった。

それでも、特に、何かに困ったと言う訳でも無い。

祖母は、何時も着物を来ており、

良く、チクチク針仕事をしていた。

私は、直ぐ傍で、飽きる事も無く、

針を動かす、祖母の手元を見ていた。

布地の上を、チクチク動く針は、まるで自由自在に、泳いでいるかの様に、

見え、まるで魔法の様にも思えた。

祖母の、右手の中指の第一関節が無かったのを、

子供ながら、不思議に思っていたが、

何故か、聞いてはいけない様に思った。

しかし

何か、足りない。

父と言う、存在。

母と言う、存在。

其の頃の、私に理解するには、小さ過ぎた。


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