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第13回びぶりお文学賞表彰式

「詩のテーマは反抗期。わたしはいまだ反抗期を卒業できていない」

第13回琉球大学びぶりお文学賞(詩部門)を受けた島袋昂也さんが受賞の言葉で述べた。2月20日、琉球大学附属図書館で開かれた表彰式。受賞者のあいさつは入賞者全員が表彰状を受け取り、審査員代表による講評ののちに正賞受賞者のみが行った。びぶりお文学賞には小説と詩の2部門があり、島袋さんは詩部門の正賞受賞者だ。

「去年、救急車で運ばれて入院した。家族も駆け付けた。会話もろくにしないわたしを看病してくれた。これまで家族、親類が集まる清明祭(シーミー)などを避けてきたが、何年ぶりかに祖母の家に行き、感じたことを詩にした。変わるもの、変わらないものがあるがそういったことを詩に書いた。〈まま〉という言葉にこだわった。過去2回の佳作を含め、表現に対する意欲が高まり今回の受賞で自信につながった」

というようなことを述べていた。島袋さんが入賞したのは2016年、2018年に続いて3回目。過去2回の佳作に続き、晴れて今回、正賞に選出された。「わがまま」という作品だ。語尾に〈まま〉が多用され、親との関係性を見つめ直した末の後悔が刻まれているような詩だ。家族へ向けた真摯なまなざしが感じ取れる。初めて入賞した2016年の作品「キャッチボール」も、たしか書き手の家族に対する優しい視線がつたわる作品だった覚えがある。

家族とは詩人にとって生と死、どのように生きるかということと並ぶ、大きなテーマだと思う。読み手を含め、誰もが歯がゆさを抱えていたり、後悔を引きずったり、必ずしも思い通りにいかない関係性にいらだったりするのが家族だ。真摯に向き合えば自己の姿にも正対することを避けられない。読み手ももっとも身近な家族という存在とどう向き合っていくべきか、葛藤を抱えている人が多いはずで、共感を得やすい題材でもある。そこで「わがまま」という言葉を軸において自己対象化を実現した。すてきな作品だ。

作品は「琉球大学びぶりお文学賞受賞作品集」が各大学に配られており、そこに掲載されている。

佳作受賞者は次の通り。

綾村湯葉「内気なスーサイド」、仲宗根翼「生きるための詩」、凛藤海「薄氷を踊る」、豊見山尚樹「白い廊下の窓から」、玉城琉舞「ぬーやてぃんないん」。

表彰後の懇親会で、入賞した皆さんに詩集をだすことを薦めて回った。詩集は手作りに近いものなら1万円でだすこともできる。印刷所を介せば10万円でちゃんとしたものがつくれる。出版社を通せば50万円ほどかかる。ただネットで検索して出てくるような100万円とか150万円のプランに乗る必要はない。選択肢はたくさんある。

この賞の性格は、学生を対象としているために新人発掘、人材育成の色が濃い。これからの詩壇を担っていく書き手になってもらうためには、まずは詩集をだしてもらうことから始まると思う。今回の入賞者ならいずれも、読み応えのある詩集が編めそうだ。作品を読んだときに続いて、入賞者と言葉を交わしてあらためてそう思った。

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