見出し画像

水中翼船という乗り物

初めて四国に行ったのは中学生の時。


12歳離れた姉の結婚相手が、当時徳島県鳴門市勤務だったことから、夏休みに姉に呼ばれて遊びに行ったのだ。


田舎もなく、ずっと家にいると過干渉な母の相手をしなくてはならずストレスだったので、姉の申し出はありがたかった。


神戸1番の繁華街、三宮を抜けて大丸百貨店のある元町駅のちょっと向こうにある中突堤。そこから船で鳴門まで乗るのだ。


今は、豪華クルーズ船「ルミナス」の乗り場になっているが、当時はポートタワー以外に何もないところだった。


そこに結構小さめの船がちょこんと停泊している。水中翼船というものであるらしい。何じゃそら。


なんでも、走り出したらクジラの胸びれみたいな翼が出てきて、これがあるから高速で進めるのだそう。ふ〜ん、良くわからないけど、そうなんや。


早速船になり乗り込む。狭い。船というより何だかバスみたいだ。


ガガガガガガと結構大きな音を立てて船は進む。音のうるささもあるけど、小刻みにガタガタ揺れるのがなんとも言い難く、快適な乗り心地とはとうてい言いがたいものだった。


ただし、これ、かなり早い。1時間ぐらいで鳴門に着いちゃう。このくらいならガマンしてあげるよ、ウン。


1時間経って鳴門の撫養(むや)港に到着。姉夫婦が車で迎えに来てくれていた。


こっちにいる間、色んな人ところに連れて行ってもらった。小松島で釣りをしたり、桟敷で阿波踊りを見たり、鳴門海峡のすぐ近くで活魚料理をごちそうになったり。


姉が自分のことを、私の「育ての母」だと言っていたのも頷けるぐらい、色々お世話になった。


義兄の部屋にどっさりあった青年マンガを読みふけるのも、家ではできない至福のひとときだったし(笑)


たっぷり遊んで港まで送ってもらい、また乗りごこちの悪い水中翼船で神戸に帰る。中突堤まで迎えに来ていた母の顔を見て、嬉しいのか、うっとおしいのかわからない気持ちになっていた。



今回の記事この記事を書くにあたって、水中翼船のことを調べた。この航路を運行していたのは阪急汽船で、鳴門海峡大橋の開通とともにこの航路も無くなってしまったらしいが、当時の船の名前は、なんと「あまつ」と「かすがの」だったということです。



サポートされたらめっちゃ喜びます!