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プロダクト開発サイクルを可視化し、プロダクトマネジメントの民主化を目指す話

Hiroki Miyasato

この記事は"プロダクトマネージャー Advent Calendar 2021"の21日目の記事です。

こんにちは。宮里(@miyahirok)と申します。ヘイ株式会社(以下、hey)で STORES 予約 のプロダクトマネージャーをしております。

STORES 予約 は、heyが2020年7月にグループ化したCoubic(クービック)が前身であり、様々な業種のサービス事業者さま(heyではオーナーさんと呼んでます)にオンラインでの予約管理・決済・顧客管理のシステムとして利用いただいています。
ちなみに Advent Calendar 12日目の記事 で書かれているBtoBtoC SaaS に該当するのでわかりみが深かったです。オーナーさんに100%プロダクトを活用いただくことの難しさを痛感しています。

さて、2021年10月にheyに入社して3ヶ月弱が経ちますが、年末の振り返りを兼ねてアドベントカレンダーにエントリーさせていただきました。
この記事では、プロダクト開発サイクルを可視化して、プロダクトマネジメントの民主化を目指す話について書きたいと思います。実用的な内容が少なくて恐縮ですが、イチプロダクトマネージャーが転職直後に取り組んだことと、考えたことのひとつの事例として読んでいただければ幸いです。

なぜプロダクト開発サイクルを可視化するのか

これまでそれなりに長い年月、プロダクト開発をリードする立場を経験してきた中で、自分のリソース配分のプライオリティとして高いのが「ボトルネックを見つけて解消する」ことです。

ボトルネックの解消がなぜ大事かというと、TOC理論というものがあります。どんなに複雑なシステムでも全体のスループットを規定するのはごく少数の要素の制約条件(=ボトルネック)に支配されるという理論です。「ザ・ゴール」という本が有名ですね。

開発チームのROIを最大化することがプロダクトマネージャーの重要なミッションなので、最初に確認することとしてどんなプロセスで企画〜開発〜リリース〜運用〜振り返りと進めるのかを可視化し、ちゃんとサイクルとして流れがつながっているか、詰まりそうなところがないかをチェックするようにしています。詰まりそうなところを最初に解消しておかないと、他のプロセスをいくら頑張ったところで全体のスループットが上がらず無駄がとても多くなります。

昨今のプロダクト開発には多くの専門性が必要とされますが、いくら能力の高いスペシャリストがいたとしても、全体でボトルネックとなる箇所が1箇所あるだけで、その人の能力が活きない可能性が出てきます。多くの場合、プロダクトバックログに積まれる要件に対して実装スピードの方が早いということは少ないと思います。だからこそユーザーへの提供価値を最大化するために何をつくるのかとその優先順位の決定の重要性が高いと理解しています。

今回heyに入って少ししたタイミングで自分のキャッチアップを兼ねてプロダクト開発サイクルの可視化をはじめました。見えないものは改善できないとはよく言われますが、可視化をすることで課題の発見と把握がしやすくなります。

余談ですが、新しい環境に入ったときにインプットしたことを可視化するのはキャッチアップにとても有効です。久津さんのブログにもありますが、ある程度できたらレビューしてもらうのがよいですね。主要なデータモデルの理解と併せて、プロダクトのカスタマージャーニーやユースケース、業務フローなどを自分で可視化してみるのもおすすめです。


プロダクト開発サイクルを可視化して見えてきた課題

まずはAS-ISのプロダクト開発サイクルを可視化してみます。SmartHRさんが図解のブログを記載してくれており、規模感も近いSaaS企業として参考になりました。

今回、以下の3つのフェーズにわけて現状のアクティビティとアウトプットとそのつながりを可視化していきました。

・インプットフェーズ:ユーザー・マーケット・ステークホルダ・テクノロジーのインプットをスムーズに集約する仕組み
・ディスカバリーフェーズ:何を検証するか優先順位を決め、課題とソリューションを発見するためのフェーズ
・デリバリーフェーズ:ソリューションを設計・実装しユーザーに届けるためのフェーズ

STORES 予約 では自分が入るまでプロダクトマネージャーが1人の体制で、ビジネス部門からの要望の取りまとめ、リサーチやロードマップの策定、開発要件の作成からデザイナー・エンジニアとのやりとりまで全て1人で行なっていました。他部門からの信頼の厚さにとても感心しましたが、組織規模も急拡大する中でプロダクトも急成長し、担う役割のボリュームがとても大きくなっていました。1人で担っているが故にプロダクトマネジメントのプロセスが少しブラックボックスになっているようでした。

可視化したことで主に課題として見えてきたのは以下の3点でした。

・ビジネス部門からの要望は集めているが、ロードマップへ反映するまでのプロセスが不明瞭
・PMとして持っている仮説が可視化されておらず、ロードマップに入っているもの以外見えていない
・リリース後の効果の検証や仮説への反映がやりきれていない

STORES 予約は多様な業種・業態で利用可能なSaaSであり、ニーズも様々なため、誰の何を解決するのか、UXの改善や負債の解消も含めその優先順位とリソース配分を決める論点をちゃんと整理しないとロードマップの議論が空中戦に陥りがちです。

2人となったPMチームで議論をし、課題感のすり合わせの上、直近こうしたいというTO-BEの形でプロダクト開発サイクルを書き換えました。

(※今回は各アクティビティやアウトプットの解説は省きます)

プロダクト開発サイクル

特にオーナーさんからの要望やフィードバックを効果的に集約できるようにすることと、PMチームで持っている仮説の見える化を進めていくことにしました。
また、リリース後の仮説検証を効果的に行うためにデータ計測が不十分だった点の改善も随時行っています。

可視化したプロダクト開発サイクルは組織内に共有し、上記の取り組みの位置付けを説明しながらロードマップ策定のプロセスの整備を各部門を巻き込んで進めています。

こういった情報の透明化を進めることの意義として、単にプロダクト開発の流れをPM以外のメンバーに認識してもらうだけでなく、プロダクトの提供価値をさらに高めていくための仮説検証・開発の優先順位がどのような軸で意思決定されているのか、その過程と結論を組織全体で学び、理解している状態を目指したいということを考えています。

それは、組織の誰もが優先順位を自律的に判断できるようになることで、プロダクトマネジメントをPMが集権的に行うのではなく、組織全体で分散的に行う、プロダクトマネジメントの民主化を目指したいということです。

プロダクトマネジメントの民主化を目指す

プロダクトマネジメントの役割は色々な表現がされていますが、自分が気に入っているのは10X矢本さんの「ストラテジーと実装の一致状態を継続させる」という定義です。

時間軸と共にビジネス環境も組織もユーザーもプロダクトも変わっていく中でその変化や乖離を認識し、いわゆるプロダクトマネジメントトライアングルを俯瞰して空白を埋めたり、越境して領域間を繋ぎ合わせるなどの役割を担いつつ、不確実性の高い状況の中で今この瞬間にチームのベクトルがどの方向にどの強度で向いているべきなのかを指し示すのがプロダクトマネージャーの大事な役割だと認識しています。

一方で、プロダクトマネージャーだけでトライアングルの変化や乖離を検知するのは難しいです。そのために、トライアングルのどこかの要素で検知した変化が、トライアングル全体に素早く伝搬するようなことが仕組みとして機能している状態が理想的です。

ちょっと話がそれますが、今年のpmconfは無料で参加できるようになりましたが、目的として「より多くの人にプロダクトマネジメントに触れる機会を得ていただけること」ということがありました。実際にプロダクトマネージャー以外の職種の方々にもプロダクトマネジメントの知見・ノウハウが広がってきているのではないかと思っています。

日々オーナーさんと接しているセールスやCSのメンバーや、HOWについての高い技術やアンテナをもつデザイナー、エンジニアなどプロダクトに関わる全員がプロダクトマネジメントの概念とプロダクトの提供価値・仮説・課題を理解した上で、それぞれの観点であるべき姿を描きロードマップへ質の高いフィードバックがされることが、価値が高い機能開発がされる原動力になると信じています。

heyのビジネスがとてもよいと思っている点として、オーナーさんの事業の成功=heyの事業の成功となっていることです。ユーザー価値と事業収益がトレードオフの構造になることは一般的にはよくあることかと思いますが、heyではその両立がしやすく、部門間でも対立することはなく純粋にオーナーさんの成功を組織全体で考えることができます。まさに、プロダクトマネジメントをPMチームが集権的に行うのではなく、各チームに分散化されている(Teal型のような)状態が実現できるんじゃないかと妄想しています。

最終的にはPMが逐一優先順位を決めなくても、例えばセールスとエンジニアだけで精度の高い仮説とROIに基づいた機能開発がされ、顧客フィードバックを得て改善が進んでいくようなことができたら理想だなと思っています。

情報の透明化はそのための第一歩であり、取り組みは始まったばかりですが、また何かしらの成果や学びがありましたら記事にできればと思います。

もしこういった取り組みをやっているよとか、興味があるという方がいらっしゃいましたら情報交換やディスカッションさせていただきたいので、是非 @miyahirok までDMいただければ嬉しいです。

(尚、偉そうに書いていますがPMとして優先順位の意思決定の精度も全然まだまだな状態だと思ってます。日々勉強です。)

最後に宣伝

hey社でもアドベントカレンダーをやっています。PM陣も参加しているのでぜひ覗いてみてください。またheyのPM陣によるリレー記事もProductZineで連載中です。

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Hiroki Miyasato
heyでプロダクトマネージャーをしています。