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仕事として『書く』ということ。


普段、人に依頼されて文章を書く仕事をしている。

作家とかエッセイストではない。
ほとんどの場合、私の名前は出ない。

私ではない誰かの思いや伝えたいことを、その誰かにかわって文章にするという仕事が多い。

それはインタビュー記事だったり、講演の要約だったり、お店のオープンのご案内だったり、会社のホームページだったりする。

そのような文章を書くのと、私の考えや意見を述べる文章を書くのとでは、最初のアプローチからして違う。
私はあくまでも代弁者だ。
ここに私の主観は必要ない。
この人は、この会社は、誰に何を伝えたいのか。
その人の想いや熱が一番感じられる部分を探る。

そして、次に、クライアントさんが、伝えたいと考えている人々に伝えるためにはどういう切り口が効果的なのか考える。
私のライターとしての腕の見せ所があるとするならば、この部分かもしれない。
あなたの言いたいことをこういう風に伝えたら、もっと伝わりますよ。
ドストライクの直球でいくのか、巧妙なカーブでいくのか、触発するようなぐさりと突き刺すようなやり方もあれば、共感を呼び込むような方法などいろいろだ。

何を誰にどんな風に伝えるのか、その輪郭が決まったら、いざ文章を書くのであるが、誰かの代弁者として文章を書くといういう行為は、ある意味翻訳作業に似ている。

誰かの思いを私の脳を通して言葉にし直す作業。

そうは言っても、私は機械ではなく感情のある人間だから、どうしてもそこに私の色のようなものは出てしまう。
よく使う単語とか、言い回しとか、それを0にするのは多分不可能だ。

でも、なるべくそれらを排除するように心がける。
その代わり、その人の語った言葉の中から、その人らしさが感じられる言葉をなるべく使う。

私的に言うと、『文章にクライアントさんの思いを乗せて書く』ってことだ。

代弁者として書く以上、そこが一番大切なところで、それ抜きでどんなに文章の形だけ整えても意味がない。

「てにをは」に気をつけるとか、1文は50字以内とか、同じ語尾を繰り返さないとか、句読点を適度にふるとか、文章を書くうえで注意するポイントはいろいろあるんだけど、そんなことよりも何よりも、クライアントさんの思いが伝わる文章かどうかが大事。

だからこそ、常に考えるのだ、この人は何を一番伝えたいのだろうかと。

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