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クリスマスに失恋した話。

「彼女いるんだよね。」

その言葉を聞いたことで、私の1年半の片思いはあっけなく終わった。

彼女がいるくらいなんだよって言う人もいるかもしれない。でも、そこまでで何となく脈がないんだろうなって分かってた。だからこそ、あぁ終わりだなって瞬間的に悟った。

・・・・・

彼は私の2歳年下で、私が3年目になる時に新人として職場にやってきた。

明るくて、コミュニケーション能力が高くて、身長も高くて、爽やかな彼は、職場にもすぐに溶け込んだ。

同じグループになった私は、年が近いこともあり仕事を色々と教える立場となった。机も隣でたくさんの話をした。

2人の共通の好きな食べ物はラーメン。仕事が終わると、車を持っていない後輩を送るついでに、近くのラーメン屋さんによく2人で行ったのだ。お互いの趣味や家族の話、仕事の愚痴なんかも言い合った。

もともと彼は仕事ができる人間だったので、何事もスローペースの私はいつしか仕事で頼ることも増えてきた。

最初は敬語だった彼も、自然とタメ口になることが増えてきた。でも職場ではいつも通りだった。2人きりの時にしか出さないタメ口とか、年下だけど仕事でフォローしてくれるところとか、ダメな私を「しょうがないなぁ」ってからかいながら笑ってくれるところとか、とにかく全てが大好きだった。

そんな関係が1年続いた。私は好きになると分かりやすい人なので、きっと気持ちは届いていたんだと思う。でも、関係は悪化もしなければ、進展することもなく、ゆるゆると時間だけが流れていった。

春を迎え、出会いと別れが訪れた。でも、彼は相変わらず私と同じグループで、隣の席だった。私はこの関係でいることがだんだんと辛くなっていた。何か動かなければと思っていた。

この1年で私の体重は20キロ減って、服にも化粧にも気を遣うようになっていた。少しでも可愛くみられたくて、できることはなんでもした。でも、進展はなく、2人で出かける回数もいつしか減ってきていた。

あぁ、だめなんだな。きっと、彼には好きな人ができたんだな。直感的に私は思った。

実は、彼に好きな人がいるということは去年の夏に一度聞いていた。ふざけて話していたから、進展させるつもりは無さそうだったけど、近くにいる私ではなく、恋人を探そうとしてる彼に絶望し、諦めようとしていたのだ。

頭の整理はある程度ついていたけれど、心にひとかけらの未練が残っていた。だからこそ、春になって出かける回数が減ったことに対して、なんとなく気付いてしまったのだ。

きっと彼女ができたんだろうな、と。

・・・・・

そして、時が経ち、冒頭に戻るわけである。

12月24日から飲みはじめたけれど、彼の口から彼女ができたことを聞いたのは25日に日付が変わってからであった。お互いに終電はなくなり、お酒の勢いで聞いてしまった。その言葉は、私の心の中のひとかけらの未練をあっさりと砕いた。というか、砕かなければならないと感じた。

「え、知らなかったんだけど!おめでとう。お幸せにね」

本当に思ってもないことって、スラスラっと口から出るんだな、なんて思いつつ、自分に言える最大限の嘘を笑顔でついた。

こうして、私の1年半の片思いはあっけなく、終わってしまったのだ。

・・・・・

あれから時が更に経ち、3月となった。職場で買い出しにいくものがあり、2人で休日、ショッピングモールへと出かけた。

久しぶりのお出かけ。

久しぶりのラーメン。

久しぶりの2人きり。

なんだか懐かしい時間だった。

ラーメンを食べているとき、彼はこう口にした。

「実は、今年、結婚するんだ。」

相手は去年まで職場にいた女の子。そう、付き合っている彼女だ。更に聞いていくと、「付き合ってる」と私に言った時には、既に婚約をしていたそうだ。


もう彼を好きな気持ちは完全になくなっているつもりだった。でも、その言葉を聞いたとき、心の奥底が痛んだ。



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