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第2章 ロビーマネーで腐敗したアメリカ政治

トップ0.01%の超富豪の課税率は1%以下

現代のアメリカ社会は、人口のトップ0.01%の層に支配され、富裕層だけが富を手に入れることができる政治構造となり、貧富の差は世界最悪となった。アメリカ国民の60%以上が実質所得、実質賃金が年々低下している。(FRBは、この30年間アメリカの90%の人の実質所得・実質賃金が年々低下してきたとレポートした。統計数字の見かたで変わる。)
その一方でアメリカのトップ0.01%の人の富豪者は毎年数1000億円から数兆円の所得を増やしている。アメリカのボトム30%の人々には貯金はない。100万円以下の蓄えしかないものが多い。
しかし、こうしたアメリカの貧富の差は実は、アメリカ上層部(Deep State)のものによって意図的につくられたのだ。つまりワシントンを占拠しているDeep Stateグループと御用経済学者によってこうした社会経済構造がつくられたのである。

トップ0.01%の超富豪の課税率は1%以下である。アメリカの大富豪のジェフ・べソス(アマゾン)、イーロン・マスク、ザッカ―バーグ(フェースブック)、ウオーレン・バフェット、カール・アイカン(ヘッジファンド)、ジョージ・ソロスらは税金を少ししか払っていない。彼らは特別な会計士を雇い、課税率0.1%~0.9% 程度の税務申告をさせている。
こうした大富豪は自分の収入は現金ではなく、自分の会社の株式でもらう。そしてその企業の利益は100%、株主であるその大富豪に行く。バフェットは2014年から2018年の4年間に彼の資産は240億ドル増えたが、税金は0.1%しか払っていない。ザッカ―バーグは「ザッカ―バーグ・ファンデーション」を設立し、自分の所得の全部をこの財団に流している。これには資本利得税はかからない。この中から膨大な額をある政治家に献金している。しかし政治に献金している者は、その献金した「ロビーマネー」の数倍の利得を得ている。ザッカ―バーグの課税率は0.9%である。アメリカ中間層の所得に対する課税率は30%である。これではアメリカは民主主義の国とは言えない。

大富豪が儲けるために働く政治家

1947年から1974年まで、アメリカ人の一人当たりの労働生産性は90%上昇した。そしてアメリカ中間層の賃金も90%上昇した。アメリカは公正な社会であった。しかしレーガン政権になった1981年から今日までは、一人当たり労働生産性は83%上昇した。だがアメリカの中間層の賃金は4%しか伸びなかった。これは公正な民主主義社会とは言えない。

1980年までは企業は株主と従業員のものであった。企業の利益の50%は株主に行き、残りの50%は企業のR&Dと労働者の賃金に回っていた。しかし1981年、レーガン政権になりグローバル化に走り、経済構造は悪化した。特に1990年、ビル・クリントン政権になりその度がさらに悪化した。その結果、企業の利益の94%は株主に行き、残りの6%が企業のR&Dと労働者の賃金に回った。こうした政策を法制化し、実施したのはウォール街からホワイトハウスに入ったロバート・ルービン、ローレンス・サマーたちである。彼らはDeep Stateの有力な手下であった。

ビル・クリントン大統領は中国に接近し、中国に貿易の最恵国待遇を与え、アメリカの工場を中国に移し始めた。労働組合には「賃金を抑えなければ、工場を中国に移転させるぞ」と脅し、アメリカの労働組合の力を弱体化し、賃金の上昇を抑えた。

2010年のバラク・オバマ時代になると企業の利益の100%が株主に流れ、企業のR&Dと労働者へはゼロになった。こうしてアメリカ産業の競争力は衰退し、アメリカは商品の輸入国になった。アメリカは、商品を輸入するための金もないので日本から金を借り、「借金大国」になった。日本はアメリカへのキャシュ・ディスペンサーになった。

こうしたことが起こったのは、富豪たちがもっと儲けるために、ロビー活動を活発化し、大富豪が自国と外国から得た富を、税金を払わないで自分のポケットに入れるための法的な仕組みを政治家・議員に作らせたためである。そして「Super Pac」という制度で、表面上は匿名でいくらでも政治家に献金できるようにした。しかし裏ではどの企業が政治家の誰に献金したかが分かるようになっており、富豪の利権業者は正々堂々と、自分の利権が拡大するような法案を政治家・議員に作らせた。

かつては、アメリカの政治家は議員を辞めた後にロビー活動をするものは3%程度であったが、いまでは上院議員の90%、下院議員の70%の者が、「ビジネスコンサルタント」などという組織をつくり、堂々とロビー活動をしている。つまりアメリカの政治家は自分の利益と利権業者のために動き、アメリカ国民のためには動いていないのである。
議員は、現役中はいろいろの企業のロビイストに「あなたのためになる法案を作ってあげましょう」と言い、「どんな法案を作ってほしいか」と聞く。そして「あなたの要望する法案を作ります。その法案ができたらしかるべき金を私の組織に振り込んでください」と言って取引をする。最近のアメリカの法案は数百ページから数千ページの膨大なものになっている。その理由は、あまり議会で議論されないようにし、対象利権業者と政治家が取引で課税させないような条項をちりばめているからである。つまりロビイストのやりたい放題にできる仕組みになっているのである。税法である「501C」というものがある。誰でもNGO、NPOという「社会福祉団体」、「LGBT団体」などを組織できる。この組織で誰からでもお金を匿名で受け取ることができる。この組織から政治家のSuper PACとして政治家に金を渡すことができる。ロビイストの利権業者は年間7000億円の金を議員に流している。こうした仕組みは1985年から作られていた。多くのロビイストの事務所がワシントンに設立された。ワシントンは「ロビイスト天国」になった。日本の政治資金の動きとは雲泥の差がある。

金持・富豪にだけ金が集まるような仕組み

1985年以前は、アメリカの国民所得の増加した部分の20%~25%がアメリカのトップ1%の層に流れていたが、1985年以降は、45%がトップ1%層に流れ、ジョージ・ブッシュ大統領になり60%がトップ1%層に流れ、バラク・オバマ政権になってから国民取得の増加の95%がトップ1%に流れている。国民所得の増加はあってもアメリカ国民に金は流れない仕組みになってしまった。

アメリカのDeep State大富豪がマスコミと金融業界を支配し、政治家を支配し、アメリカでは金持・富豪にだけ金が集まるような仕組みを作った。
2016年の大統領選挙でアメリカ国民の白人は「このアメリカの経済政策は不正である」ことを、いろいろな証拠の事実を入手して、知ることになった。しかし最近このことをアメリカ国民全体が知ってしまった。そのために2016年の大統領予備選で、民主党の中でもヒラリー・クリントンは極左の社会主義者であるバーニー・サンダースに負けていた。Deep Stateに反対しているトランプが最終的に大統領に選ばれたのである。

貧富の差が激しくなると政治は腐敗する

Deep State:ネオコングループは、戦争をしかけてイラク、シリア、イランを叩き潰すと宣言して、実行した。アメリカはイラクに「薬品の制裁」をしてイラクの子供60万人を死亡させた。これもジェノサイトである。
「オルガーキ」とも呼ばれるDeep Stateがアメリカの戦争政策を決めている。ネオコンの幹部リチャード・アーミティジは「イラクに戦争を仕掛けるのだ」と言い続けていた。9・11の2日後に、アーミティジは「イラクに戦争を仕掛ける」と宣言した。2003年にイラク戦争が仕掛けられ、140万人の民間人が殺された。

貧富の差が激しくなると政府は腐敗する。これは歴史が証明している。アメリカでは政治資金規正法が表面的にはあるが、2000年の選挙では1兆9000億円が使われた。アメリカの政治資金規正法は80万円に対して規制しているが、これは政治に使われる金の5%で、それ以外は無制限に誰からでも金をもらえる。それはSuper PAC制度で、これは匿名であり、しかも金額の上限はない。人はこれを「合法的賄賂制度」と呼んでいる。
ザッカ―バーグは1800億円政治家に献金したが、翌年彼の会社の資産価値は7兆円増えていた。

2024年5月24日  三輪晴治