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かないくん (谷川俊太郎:作 松本大洋:絵)

この本の帯にはこう書かれています。

谷川俊太郎が、一夜で綴り、松本大洋が、二年かけて描いた。

『死』をテーマにした絵本です。

一回さらっと読んだだけでは何だかよくわからない。
何度も何度も読み返して、
ようやく、何となくこの作品の輪郭の一部が見えてきたような気がしてきました。

文章ももちろん素晴らしいのだけど、松本大洋の絵がスゴイ!
文章の通りには表現されていないのに、それがこの作品をより深いものにしている。

例えば、こういう文があります。

『かないくんがつくった

きょうりゅうが、
まだある。

かないくんが
かいたえも、
まだはりだされてる。』

普通なら、そのページには<かないくんの作った恐竜や絵>を描くと思うけれども、松本大洋は全く違う場面を描いています。
でも、それがいい。

他にも、いいなあ~!とため息をついてしまう箇所がいろいろとあるのだけど、・・・というか、全部いいのだけれど、特に凄いと思うのは表紙。

かないくんの横顔。
何を思っているのか、何を眺めているのかわからないけれど、
私には、かないくんの生きてきた時間を見つめているように感じられました。

かないくんは、読者から見て向かって右を向いています。
この本は左を開けます。
だから左を見ていたら、未来。
右を見ていたら過去を見ているような感じがするのです。

まあ、それは私がそう思うだけですけどね。

内容はネタバレになるので、詳しくは書きませんが、最後の方で、

『突然私は「始まった」と思った。

何が始まったのかは分からない。
でも終わったのではなく、
始まったんだと思った。』

・・・という箇所があります。
この「始まった」のは何なんだろう?
何が始まったのだろう?
これをどう解釈するかは読んだ人がそれぞれに考えればいいのだろうけど、考えれば考えるほど難しい。


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