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気持ちを音で。音を絵で。映画「BLUE GIANT」。

音を絵にするって、こんな感じなのか。

こんな風にして伝えるのか、音を絵にできる人はすごいと思った。原作の漫画にもない世界。

音を、絵に。

漫画は、大がゆきのりくんを初めて見るあたりまでは読んでいた。
漫画には、本物の音はついていない。絵だけ。頭の中で鳴る音は無限だ。
映画では実際の音がある。そこに絵がつくという順。漫画とは違う。どんな絵だったのか、うまく言えないくらい、音と一体となって、音を絵にして表現していたと思う。

映画では、みんなの頭の中で鳴っている音を本当に出すことになる。もちろん、それが唯一の正解ではないけれど。
音楽を上原ひろみさんに託し、大の音に馬場智章さんを選ぶ。その人選は確かなんだろうなと思う。大の音に、なんとなく納得する。
ミュージシャンは音だけで表現する。まあ、ライブでは、衣装や照明やセットやステージングとか、見た目も含めてなのかもしれないけれど。音源では、音だけ。

その音を、ナレーションで説明するというのは少なかった気がする。絵で伝えていた。ゆきのりくんの、心をさらけ出すようなソロができた、というのも、立ち上がって弾き始めるところであったり(これは、上原ひろみさん的、とみんな思ったであろう)、観客の反応だったりで表現されている。一番最後の曲では、雪を表現しているところで雪を見せたり。絵によって、わかりやすくなっている。

最後の曲、号泣した。ゆきのりくんのソロは片手だから、どうしても音が薄くなる。それを感じた大が低い音でバッキングを入れ始めたのも泣けたポイントだった。

モーションキャプチャー?

一つ、どうしても気になったことは。
モーションキャプチャーってああいうものなのかな。あまり最近のアニメを見ていないために、よくわからない。そういう自分が見ると、その時だけ実写っぽくなって、ちょっと違和感があった。
モーションキャプチャーじゃなさそうな時、例えば映画の一番最初の場面では、吹くときこんな動きするかな?と思った。逆に、例えばゆきのりくんがピアノを弾きながら微かに座る位置を移動するところがあって、それが怖いくらい自然な動きだった。

もっと人物の動きにこだわるなら、いくらでもこだわれるのだろうと思った。
そこまでやっていないのは、狙って粗くしたく表現ということなのだろうか。それとも、予算とかの問題なのだろうか。

「So Blue」の内部や、お客さんも、同じように実写っぽくなる瞬間があった。ブルーノート東京に行ったことがあるから、あれがリアルな空間だとわかるけれど、リアルに思い浮かべられるけれど。でも、リアルなお客さんが本当に必要なのかな、とも思う。

脚本にはお金がかからない。

それから、家に帰ってきてじっくり思い返して思ったことは。

もっと大の成長するところが見たいと思った。ゆきのりくんから、この範囲以外の音は雑音、と言われているところはあったけれど、そこからどう変化したのか、わかりやすくは描かれていなかった。よく聞いたらわかったのかな。音も、より大きくなったのかもしれないけれどちょっとわからなくて。
アドリブソロで心をさらけ出した、というのが絵で表現されていたゆきのりくんや、初めたばかりで最後はドラムソロもできるようになった玉田くんの方が、成長がよく見えた。玉田くん、18歳でドラムを始めるって、上手くなるのに決して遅い訳じゃないと思う。その人間性でも、バンドに多大なる貢献をしていた。バンドってそういう部分も絶対大事。
大は最初から結構すごくて、最後も、という感じ。主人公は壁にぶつかって成長するべきだ、みたいな感覚に囚われているのかも知れないけれど。

家族のエピソードや、師匠とのエピソードがほとんど描かれていなかったけれど、お兄さんと師匠は「So Blue」に来ていた。見る人が、漫画で知っていることを前提にしている感じもした。映画の上映時間を考えると、上京するところから始めるというのが間違っているとは思わない。でも、もう少し話がわかるようにしてもよかったんじゃ、とも思う。

でもやっぱり、号泣するくらいの映画だった。

Dolby Atmosで見た。
すごいプレイというのは、音で気持ちを全部言える、というようなことを大が言っていた。
そういう演奏を目指したい、というのは、私もずっと思っていたこと。
ジャズは自由だと教えてもらってきた。

実際の音がある映画は、漫画とはまた違うところで、ジャズに興味を持つ人の裾野を広げてくれるのかもしれない。ジャズが熱くて激しいって、こんな感じなんだなとか。ブルーノート行ってみたいとか。ぎふジャズフェスティバル行ってみようかなとか。
ジャズを生き残らせるためというより、ジャズで人生が楽しくなる人、救われる人がいると思うから、そんな期待をしてしまう。

私は、またやれるのかな。
そういう葛藤は、また別のところで。

この記事、他の映画評を見ずに書いたのですが、他の皆様どう思っているのかな。

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