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あなや、あなや。

いとをかし
まだわからない。
だから、まだこわい。

そうか、
わたしはわたしが


こわい。


気づけば、約束の時間はすぎていた。
あわてて自転車に跨がる。
けれど、もう時すでに遅かった。

鳴く電話に応えたあとで
しまった、、、
また言い訳ばかりした。

すっきりしない
胃がもやもやと重くなる。

ちがう、そうじゃない。

現地までの道のりを
急がずにはいられなかった。

道中、脳内は
やってしまったという後悔
なんでこうなるだろう

ひとつの回路が繋がって、めくるめく頭。 

ちがう、そうじゃない。

それより、
天気がよくてすてきだな。
花が色彩ゆたかだな、春だな。

なんておもえたら
とってもうれしいはずだった。

きゅっと、首を絞める手綱。
にぎるのはいつもわたしの手だ。

よそ見をしてる間に、
顔から突っ込んだ道路脇の茂み。

はずむ自転車から転げ落ちるからだ。

どうした、
もう立ち上がれないのか。

耳もとで囁きをきく。
なにをしているのだろう
このまま朽ち果ててしまいたい。

ちがう、そうじゃない。

四肢は、まだ動く。
気づけばあつまる人々を
土まみれの顔でみる。

大丈夫か?
どうしたの?

どうしてこんなにも
遠くにとおくに感じるのだろう。

すぐ横の
お店の家族が飛び出してきて
水道を貸してくれた。
塗り薬もくれて、さらには
りんごジュースまで出してくれた。

日々、売るのはりんご。
またりんごに救われたのか。

ちがう、そうじゃない。

たすけてくれたのは
ひとだ。ひと。

 

わたしはひと?


それにしても、とおくかんじる。

感謝を伝えてお店をでたものの 
どこか、どうも、うすっぺらくて。

どこかむなしさが残る。
なにか欠落している気がする。

現地に着いても、ぬぐい去れず。

仲間にすら
心が開けないことに愕然として、
さらにむなしくなる。

結局、その日は
涙だけ流し帰ることに。

そして傷つく。
得体のしれないわたしに。

わたしはわたしがこわい。

暗くてひろい部屋で出口を探している。
ひらいたかごの中で外を眺めている。



外は、緑うるわしい。


 








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