及川卓也さん「ソフトウェア・ファースト」読了

年末休暇を利用して、及川卓也さんの「ソフトウェア・ファースト」を読了しました。

DX (Digital Transformation) 関連本、と言って良いと思いますが、あえてバズワードな「DX」を使わず「ソフトウェア・ファースト」というタイトル。読んで頂くと分かりますが、フワッとしたところがなく、解像度の高い言葉で語られているのが良いです。事業責任者を対象に書かれた本だと思いますが、私のような情シスにも非常に役に立ちます。

なぐり書きで恐縮ですが、個人的に印象に残ったキーワードを列挙します。「面白そう」と感じるキーワードがありましたら、ぜひ手にとって読んでほしいと思います。

個人的には「手の内化」って言葉を周囲に流行させたいと思いました。私のような中堅企業で働いていると「内製化」はけっこうしんどいキーワードに聞こえちゃんですよね。やりたいことは「手の内化」です。

それでは、みなさま、良いお年を。

・ソフトウェア・ファーストはIT・ネット企業のみの話ではない。「非IT産業」もソフトウェアを活用した事業に活路を見いださなければいけない。

・アジャイル開発も DevOps も「ユーザー重視の姿勢」から来ている。「ユーザー」は「企業の担当者」だけではなく「実際にソフトウェアを利用する人」を意識すべし。

・AI活用のためには、データ収集、データ前処理などの「AI以外の要素」が多い。ソフトウェア・ファーストも「ビジョンやミッション」「人材」「組織文化」「プロダクト・事業企画」など、ソフトウェアの力以外によるものも多い。

・「進化」とは「変化」を後から見たときに進化と評価できるもの。日本の進化が止まっているのは、変化を拒んでいるからでは?

・日本の事業会社は、いつまで「ITを特別な技術」と思い込んでいるのか?

・日本企業の過剰 / 的はずれな品質要求を見直すには「狩野モデル」が有効

・日本企業の強みでもある、ニッチでも特定領域で強烈に支持されている開発力や専門知識を武器にして、ITを用いたバーティカルな「サービス化」を進めていけば、いずれは独占的なプラットフォーマーになれるかもしれない

・DXの本質はIT活用を「手の内化」すること … 「手の内化」はトヨタグループ用語で「内製化」に似ているがすこし違う → 仮に外部パートナーを活用するにしても、自らコントロール可能な状態とすること

・BTCモデル (下記参照) → 日本はこれまでBT型だった、今後はクリエイティブのCを加えてBTC型になるべき

・ソフトウェア・ファーストのごく簡単な実践方法 → 話題になっているアプリをとにかく試す…子どもがスマホに入れているアプリを試す、海外の知人が使っているアプリを試す 等…そして自分たちの仕事に重ねて見る (コンシューマ向けに流行するアプリには理由がある、それが自分たちの仕事に参考にならないか?)

・マーケットインが正しいとは限らない、マーケットインは成熟産業向け、新しい市場を切り開く際はプロダクトアウトが必要
・プロダクトアウトは「究極の仮説」、独りよがりにならないよう、出した直後に検証を始める

・「お困りなことはないですか」と聞くと、日本人は答えるのを恥ずかしいと感じる、まだ「周りでお困りの方はいらっしゃらないですか?」と聞いたほうが良い

・10個の「手強い質問」から基本方針を整理する「インセプションデッキ」→ 2枚めの「エレベーターピッチ」で概要を書ききる

・全員を幸せにしない、進化を止めたユーザーに合わせているとプロダクトの進化も止まる、進化し続ける正しいユーザーにターゲットしよう

・ダイバーシティは、ミッションに共感した人の中で重んじられれば良い。行き先も価値観も全く異なる人との議論は時間の無駄。

・デジタイゼーション (Digitaization):アナログをデジタル情報にする
・デジタライゼーション (Digitalization):デジタル情報を用いたプロセスにする
→ 上記を終えずにデジタル・トランスフォーメーション (DX) に向かうのは無理、自組織がどの段階にいるか見極めること

・T型人材 (専門性を縦軸、周辺知識を横軸として両方を深め広げる) から、複数の専門性のある「π型人材」へ

・スティーブ・ジョブズが2005年にスタンフォード大学で語った「コネクティング・ザ・ドッツ」は、キャリア開発における「計画的偶発性理論」として提唱されている、「好奇心」「持続性」「柔軟性」「楽観性」「冒険心」を持った人に起きやすい