ドラマ アンサング・シンデレラ 第7話 解説とツッコミ

こんばんわ。

調剤の機械化

いろいろな調剤を行う機械がどんどん出てきています。
・粉薬を自動で測って1回分ごとにパックする機械
・水薬の量を自動で測って容器に入れる機械
・錠剤の数を自動で数えて取り揃える機械
・一包化(1回分ごとに薬を1つの袋にまとめる)する機械
・鑑査をして、記録する機械(画像に記録するものもあります)
これらの導入目的は、
 作業の時間短縮
 作業を確実に行う
 薬の中に異物が入るのを防ぐ
 調剤した薬の形状を記録する
 人件費の節約
などがあります。
機械を導入しても、設定するのは人間なので、設定を間違えると手間がかかりますし、メンテナンスができているか確認する必要があります。機械が正確な作業をするには、部品が摩耗していないか汚れていないか観察し適度なところで修繕する必要があります。メンテナンスをしっかり、定期的に行える仕組みを作ることが機械をより長く、安く、安全、安定的に使える秘訣です。

ユヤマの調剤ロボット

http://www.yuyama.co.jp/product/products/robot.html

http://www.yuyama.co.jp/product/

抗がん剤自動調整装置
設定すれば、無菌状態を保って正確な量の抗がん剤を調整することができます。調製する薬剤師が抗がん剤に触れたり、空気を吸ったりする危険がかなり軽減されます。

 https://www.tosho.cc/products/cytocare.html

調剤したものが正確か、確認するシステムもあります。調剤された数を記録し、患者さんに正確な量の薬をお渡しできているか記録するものです。
常用量と照合することもでき、薬をのむ量が多すぎることはないかについてもチェックできるものがあります。

http://www.yuyama.co.jp/product/products/inspection.html


機械で一包化できるようになると、一包化調剤をすることができる患者数が増えます。一つの袋にまとまっていれば飲むことができる人への服薬支援です。
しかし、まだ解決できていない調剤があります。粉砕調剤です。
錠剤を粉砕して、1回分ごとに薬をまとめてお渡しするものです。この作業はほぼ人の手によって行われています。機械は錠剤を粉砕するときに使うミルと、分包するときに使う分包機です。

 これらの機械を用いて正確、安全な調剤を速くできるようになって人の手間が減った場合に何をするか示すことが薬局を運営する人の手腕が問われるところです。
 薬剤師がひとりひとりの患者さんのために、より改善できることはないか、検討できるような支援ができるよう頭を働かす時間を捻出する方向にもっていくのか、空いた時間でさらに多くの作業を詰め込むのか、それとも作業量はそのままに人を減らして利益を得るのか。


喘息とタバコ

 喘息のような呼吸器の疾患を抱える方にとっては、タバコは特に呼吸器の状態を悪くし息苦しい状態を作ります。しかし、治療のストレスからか、喫煙する人も多いのが現実です。ニコチンの依存性も大きいです。

テオフィリンとタバコには相互作用があります。喫煙する人はその旨医師に相談しましょう。禁煙外来への受診を勧められる場合と、テオフィリンの血中濃度を測って適切な量を処方する場合と、テオフィリン以外の喘息の薬を選択する場合と。

テオフィリン中毒の症状
消化器症状(特に悪心、嘔吐)
精神神経症状(頭痛、不眠、不安、興奮、痙攣、せん妄、意識障害、昏睡等)
心・血管症状(頻脈、心室頻拍、心房細動、血圧低下等)
低カリウム血症その他の電解質異常、呼吸促進、横紋筋融解症等

テオフィリンという薬、治療に有効な血液中の薬の濃度と薬が多すぎて中毒を起こす薬の血液中の濃度の境界が非常に近いです。ゆえに、必要に応じてテオフィリンの血中濃度を測って効いているか危険がないか確認するのがTDMです。
 「薬剤師が患者を見る」ことの大事さをこの回では伝えています。気をつけなければいけない副作用の徴候があるかどうか薬剤師の目で見て、有害事象が疑われる場合は「疑義照会」「トレーシングレポート」という方法が取れます。病院薬剤師の場合は主治医への報告は薬局より難しくないと思われます。

 今回の場合は、TDMをしたから新しい病気が発見されるわけではなく、むしろ治療をうまく進めるためのものなので、目的を説明すれば患者は理解できたと思われます。もしくは、医師に報告し採血してもらう方法があります。 そうなると完全に患者からは見えないアンサングな存在になりますが、医療スタッフの信頼は勝ち得ます。(たまに全て自分の手柄にする人がいますが)


仕事と病気

偶然にもタイムリーなテーマになってしまいました。

 病気になったから社会のメインストリートから外れて生きなければならないというものではありません。

こちらのオリィ研究所では、「孤独の解消」をテーマにさまざまな発明を行っています。その一環である、ALSなどの疾患のため実際に外に出て働くことの難しい人が遠隔操作でロボットを動かしカフェ店員として働きます。その人の叡智を活かし、社会参加を図ります。
 ALSにかかっているれいわの議員も、自分のできる形で議員活動をしていますが、まだまだ国会のシステムが彼らが議員活動を行うのに適していないのが現状です。

https://www.advertimes.com/20200828/article322032/

病気や障害の人が、自分のできる形で治療やリハビリを行いながら社会と接していけるようになることが、国民全体の満足度を高めると思います。

おとなになると、本人及び家族でむしろ健康問題のない人のほうが少なくなります。議員やりながら出産したっていいと思います。

 登場する議員が検査しないのは、病気であることがわかると、議員を務められなくなるのではないかという不安からです。これに関しては、現実がだいぶ前進しました。国民の意識が、メディアの大分先を歩んでいるのです。
難病があることを表明した上で、内閣総理大臣を7年8ヶ月務めた方がいるのですから。安倍晋三氏が総理を辞任するとという記者会見をした時、彼のTwitterやFBのコメントは「お疲れさまでした」というものばかりでした。中には彼の存在を苦々しく思うものもいたと思いますが、そういう人の多くはこの話題に言及しないという態度を見せていました。(一部の方は人としてどうか、と思う発現をされていました)
 メディアの病院にまで入り込む取材は必要なんでしょうか。人としての矜持はないのでしょう。

安倍晋三氏は首相辞任の記者会見(実際はCOVID-19に対する支援政策の発表がメイン)で、ご自身の治療の状況を国民に分かる言葉で説明していました。

このように、自身の治療の状況について説明する政治家は誠実に思います。
しかも、「投薬の効果がある」という記載があります。効果はありますが、治療も万全に、職務も万全に遂行するために辞任という選択をしたということです。
 こういう言葉を直接見聞きできることもSNSの良さです。今まではメディアのバイアスが入った言葉しか届きづらい状況でした。(メディアの中の人も人間である以上、バイアスが入るのは仕方ありません)


薬剤師は薬だけ見ていればいい?

議員の方が「薬剤師が表に出ることで、調剤や病棟に滞在して医師や看護師に対する支援を行う時間が短くなっている。」という指摘をしました。確かに、薬剤師が薬のことを扱うのは薬剤師の本質的な業務です。本質的な業務を行いながら、直接患者さんを見て、薬物治療に薬剤師の視点を入れ込めるようになるのが、さらなる安全な薬物治療となると考えます。それができるシステムを作るのが政策側の仕事ではないでしょうか。
 患者さんを見ることで、
 薬の作用/有害事象の兆候を見つける
 生活に合わせた用法の設定とそれができる薬剤の提案
 一包化の提案
 使用しやすい外用剤の提案
ができます。
 医師や看護師の視点では見つけづらい、薬学を勉強して知識がしっかりある人でしか見つけられない細かいところを見極めるために、薬剤師が直接患者を見る利点があります。薬剤師だけではありません。理学療法士、作業療法士などいろいろな職種の方の医学とは違う専門的な知識に基づく観察眼から治療と生活の落とし所を見つけるようになっています。

 このドラマ、看護師が殆ど出てきません。実際は「観察と処置のプロ」の看護師がしっかり普段の様子を観察して気になることがあれば他の職種に伝えることがほとんどです。治療全般の知識は総論としてあるものの、深くはないので他の職種に振ることになります。「観察」と「傾聴」という点で、他の職種は看護師に助けられています。

真のアンサング・シンデレラではないかと一部で言われている刈谷さんです。
 薬を正確にお渡しするという基本を踏まえた上で、みどりの支援をしています。こっそり医療チームに寄せ書きを書いてもらっているということは、病院内での信頼も強いと思われます。根拠建てて薬剤師の視点で疑義照会や処方提案をしたり、病棟での業務もしっかり行っていると思われます。描かれてはいませんが、病院スタッフの信頼が厚くないとここまでの根回しはできません。その信頼を、自らの知識と技術で勝ち得ているでしょう。

そして、医療従事者はどんな立場の患者であっても、興味本位な態度を見せてはなりません。入院の場合は、病気をある程度抑えて、生活しながら治療できるようにする。外来の場合も、生活との折り合いをより上手に簡単にできるようにする。どんな立場の人であっても平等に、いい状態に持っていくのが医療従事者の仕事です。




















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