「ドラマ アンサング・シンデレラ 第5話 解説」

こんばんは。今回は「アンサングシンデレラ」第5話の解説をします。

患者さんの職業、行動、趣味や何気ない一言は治療の大きなきっかけになります。
 怪我した場合の原因、リハビリの目標、今回のように「生きている間に叶えること」の大きなカギになります。(今回は「野球」「息子の店の料理を食べる」でしたね)

がんのように「治癒せず、亡くなってしまう可能性のある病気」場合、治療の過程や患者の死後に心身ともに病んでしまう家族がいます。治療の間から家族の心身の状態も観察して接していくのも医療従事者の役割です。「こういう情報があった」と報告するのは治療チーム全員の仕事です。


がん薬物療法認定薬剤師。取得が非常に難しいです。
1.薬剤師としての実務経験
2.日本病院薬剤師会会員であること
3.日病薬病院薬学認定薬剤師であること
 https://www.jshp.or.jp/banner/byouinyakugaku/

4.研修施設での実務及び所定単位数の座学の研修を受けていること
(限られた職場です)
5.がん薬物療法の実務経験
6.症例報告(50例)
7.認定試験に合格していること

https://pharma.mynavi.jp/qualification/n_001.html

によると、認定をもっている人は1000人程度です。病院薬剤師の中でも限られた人数です。経験年数がある程度以上いるので、萬津総合病院でも刈谷さんしかいない、というのは妥当です。われもわれも取れる資格ではありません。

 患者と家族の治療の方向性が同じであればいいのですが、そうでないことも往々にしてあります。この場合は、患者の意向が大事ですが、その患者の意向が明らかに不利益を与えるものであればその限りではありません。
 その時は満たされても、後で大きく本人及び家族が後悔する恐れがあるからです。

 治験について。するかどうかは「患者・その家族と医療者の関係が良好であること」が前提となります。(治験を開始してからも、患者の意思で治験を中止することができる。それをスムーズにするためにも関係が良好なことは必須)そのうえでの選択肢として治験を選ぶのが治療のトータルの満足度を上げると考えます。

患者と医療者の距離が近すぎると、治療がうまく行かなかった結果一気に崩壊することもあるのでそのあたりの線引が必要ですが、患者さんも医療従事者も人間なのでバランスが難しいです。

患者さんに希望を与える発言をする場合、根拠のある希望を与えないといけないのがプロの仕事です。「私達医療スタッフは〇〇さんのことをみて、よりよい生活を送れるよう、支援しています。」という言葉は嘘ではありません。見捨てはしない、という言葉だけでも患者さんは不安から少しは開放されると思います。

がん患者さんが退院する場合、「そのまま家で過ごしたい」という方もいます。その場合、すでに実績のある在宅医や緩和ケアの薬物の調整ができる薬局と連携し、がん患者さんの生活を支えます。
 麻薬も含めた痛み止めを用いますが、何の種類、使用量、使用タイミングを調整し、痛みがなるべく出ないように調整します。
 無菌調剤を行い、輸液を薬局内で作って患者さんの家で使用できるようにします。

緩和ケアは治療の見込みがなくなってからという認識を持っている方がいらっしゃいますが、今は治療の初期から「苦痛をなるべく軽減して生きる」という目的で行われます。誰だって、治療はしんどくないほうがいい。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/gan/gan_kanwa.html

人にぶつかったり、薬が破損する恐れがあるので調剤室では走らない!
というか。病院内では急いでいても走らない!

薬学部では、5年次に実務実習で薬局業務と病院の業務をそれぞれ11週間かけて学びます。そのなかで、居宅療養管理指導の現場に立ち会い、どういう事が行われれいるのか生の現場を見ます。自宅や施設(有料老人ホーム、グループホームは自宅扱いになります)に住んでいる患者さんが具合良く薬物治療ができているか、どう生活と折り合いをつけるのか実際に訪問して微調整していきます。居宅療養管理指導を実施してる患者さんは、薬局のカウンターに行く事が難しい方が多いので、お看取りの場面に遭遇することがあります。

死亡確認後、医療従事者は立ち去り、家族だけになります。そこで家族だけでどっぷりと事実を受け入れ、悲しむことが大事です。

死の受容の5段階のプロセスをきちんと踏むことで、家族の死を受け入れることができる、とされています。(記事では本人の場合でありますが、家族も同様です)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%BB%E3%81%AC%E7%9E%AC%E9%96%93

 ドラマでは、患者さんの家の中華料理店に薬剤師が行きます。ここで、生前をよく知る人同士で故人のことを話して弔うことは、家族のケアになります。地域に根ざした薬局の薬剤師の場合、患者も薬剤師も相互で顧客と店の人という関係になっていることが散見されます。患者の通夜や葬儀に呼ばれることがあったり、ばったり出会って家族のことを話したりします。

 自分の施したことがその患者さんにとって最善だったのか、
その施しを行った理由、どうすればより良かったか、常に考えて、よりよい医療につなげていきます。

担当する患者さんの死後、精神的にダメージを受けてしまう医療従事者が少なからずいます。

大分県立看護科学大学 第19回看護国際フォーラム
医療者のグリーフとレジリエンス ~ 私たち医療者にケアは必要ですか? ~

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjnhs/16/3/16_90/_article/-char/ja

http://www.oita-nhs.ac.jp/journal/PDF/16_3/16_3_3.pdf

 医療従事者と患者及びその家族との間で、まやかしのない良好な関係が築けていれば、治療に対する不満は出にくいとされます。患者やその家族の疑問点が解消されますし、自分のことをわかってくれるという信頼だけでその治療効果は本来想定されたものより良い結果(成果を出さなかったとしても)であることもしばしばみられます。信頼関係がない場合は、効果があったとしても、想定よりも下回ることがあります。


















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