「ドラマ アンサング・シンデレラ解説第二話」
こんにちは。アンサング・シンデレラ第2話の解説をツイッター投稿を含めて紹介します。
1.子供に薬を飲ませるには
マイコプラズマ肺炎にかかった子供にどうやって薬を飲ませるのかについてが今回のテーマの一つでした。
クラリスロマイシンはマクロライド系の抗生物質です。菌などをおとなしくさせる効果のあるものです。よく使われますが、相互作用が非常に多い上に苦いのが欠点です。服用回数を2回にすることができるのが長所です。(冒頭で味見していた「メイアクト(成分名:セフジトレンピボキシル」「フロモックス(成分名:セフカペンピボキシル)」はいずれもセフェム系第三世代の抗生物質で、いずれもまあまあ甘いですが、体に吸収される度合いが低いのと、ピボキシル基による低カルニチン血症(低血糖や痙攣を起こす)が問題になっています。)
クラリスロマイシンとカルボシステインの処方の組み合わせは珍しくありませんが、混ぜると超絶的にまずくなります。(カルボシステインによりクラリスロマイシンのコーティングが取れ、元の薬の味になるため)カルボシステイン自体は飲みやすい薬なので、単独で飲ませましょう。
いくら効果のある薬でも、飲めない薬では全く意味を成さないので、初回投与時には必ず飲めるような工夫を薬剤師は説明します。
このクラリスロマイシン、小児用の小さな錠剤が存在します。10kg以上の小児が飲めるように錠剤の中の成分の量を調整しています。メーカーも苦いことを認識していたのでしょうね。5歳ぐらいになれば、錠剤を飲む訓練をし始める時期になってきますので、錠剤に切り替えるのも一つの方法です。5歳未満だと、まだ嚥下機能が十分ではないので慎重になります。(劇中、錠剤にできないか、という母親が申し出るシーンがあり、医師が患者の顔も見ずに『錠剤はもう少し大きくならないと難しい』と言っているシーンがありました。回答自体は間違いではありませんが、接遇としてはよろしくないです。実際の小児科の医師(特に若い医師)は、親の不安に向き合い、子供を一人の人間として扱うなど接し方の上手い人が多いです。
総じて、小児用の製剤には白糖やアステルパームと言った甘味料が含まれていることが多いので、同じ質の甘いものを混ぜるほうがやりやすいです。
アイスで冷たくすると、味覚が鈍るので、飲みやすくなります。
混ぜるときは飲む直前に行いましょう。(品質の安定のため)
これは余談ですが、いくら味が濃いからと言って、ハーゲンダッツなどの高いものにすると、普段からも求めるようになるので、もう少し安くて味の濃いものにしましょう。明治エッセルスーパーカップのチョコクッキーは味が濃い上にクッキーが入っているので薬が混ざっているのを物理的にわかりにくくします。
子供が病気になった場合、子供本人もそうなんですが、母親のケアが非常に大事になってきます。特に、仕事をしている母親は、子供に充てられる時間が短い分、少しでもトラブルがあると自分のせいにしてしまいがちです。そんな母親のケアをするためにも、薬の効果的な飲ませ方の提案をして、薬の服用にかける時間を短くし、もっと余裕を持って子供に接することができるようにするもの薬剤師の役割です。
小児の治療は、保護者の治療でもあります。
2.麻薬の在庫管理
麻薬の在庫管理は厳重に行われます。調剤時に帳簿に記録する必要があります。
麻薬の管理方法について問題がないか、不定期に保健所の薬無関係の部署の方が来ます。ドラマのような人数で来ることはありません。高級車も来ませんし、公共交通機関で淡々とやってきます。麻薬取締官は薬学部卒業後、薬剤師国家試験に受かってから入る人と、法曹関係の方がいます。
麻薬の帳簿と実数が違う場合は都道府県に届け出なければなりません。
3.大宮さん関連
大宮さんは娘に薬を飲んでいること、がんの治療をしていることが知られたくなくて薬袋をトイレに流してしまいます。そのようなことをしなくても、お薬手帳または薬情を入院時に渡してくだされば、娘さんに知られることなくかかっている医療機関と服用薬の情報を病院に伝えることができます。治療をするうえで気になることがあれば、医療機関同士で問い合わせをします。
つまり、今回のように他の医療機関まで薬剤師が走る必要はなくなります。行ったとしても、個人情報の壁で教えてもらえない場合があります。
さらにいえば、娘さんがいてどうこうといった情報ももともとの医療機関に相談するので、今回のドラマのようにみどりが勝手に娘に癌告知をしてしまうこともなくなります。転院まではがんの治療に関しての最終責任者はもとの医療機関の主治医です。
生き別れの娘が見つかったという時点で、キーパーソン足り得る人物か、何かあったときの連絡先になるかということは、治療に大きな影響を与えます。
4.その他
外来処方箋1日500枚+300床だと、この人数では回らないとのこと。利益を上げられる病棟業務(服薬指導や病棟に常にいて治療の支援をすること)をするには院外に処方箋を出すべきという意見が病院薬剤師の方からありました。萬津総合病院は、DIも院内製剤(病院内でのみ使う特殊な処方の薬)も注射薬の配合も行ってるところではもう少し人数が必要です。機械化や調剤助手の活用も必要です。
医療は営利を求めてはいけないと言われ、あまり利益が出ないように診療報酬自体が設計されています。そのため、経営状態の良くない医療機関が多いです。
病床がほぼうまっていないと経営が成り立たないようになっています。
こんな状態で、COVID-19の患者さんを受けると、病室をその人のためにあけないといけませんし、感染しないようにCOVID-19対応の人とそうでない人で動線を分けないといけません。さらに、感染予防のために防護服や消毒の用具など、たくさんの物資が必要です。収入が下がっているのに支出が増えるという大変な状態です。
医療は利益を上げてはいけないか?と言えばそうではありません。上げた利益で設備を新しくするための投資や治療に必要な物資の準備、従業員の給与や退職金の準備など、最終的に患者のためになるものに使うのはまったくもって問題ありません。
昨今、小児科が総合病院の不採算部門扱いされていますが、小児の治療には人手が要る(小児をなだめたり気をそらしたり注射のときの腕の固定をしたり)けど報酬の点数が低いです。しかし、インフラとしての順位は高いほうなので、小児医療を維持するためにも他の診療科や部門が儲かる必要があります。
診療報酬を上げるために税金を上げると言っても、それを国民が許容できるでしょうか?そのために消費税を上げたけれども、他の部門の概算要求が大きいのでうまく回っていないのが実情です。(災害など致し方のないものもあります)
今の御時世では、感染予防からして職場スタッフの会食自体が許されませんが、ましてや患者個人の名前を外で喋るのは論外です。刑法134条に触れます。
次回以降も、このような形式での解説をする予定です。よろしくお願いします。
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