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フルートカフェ第六回 「音楽の言語化」

フルートファンの皆様、こんにちは ♪ フルートの事、音楽の事を様々な角度から探求するシリーズ「フルートカフェ」へようこそ。生命の息吹を伝えるフルートの音色と共に、無意識の世界に広がる壮大な冒険へ一緒に参りましょう!

このシリーズはスタンドFMとYoutubeと両方でも配信しています。

▶️ スタンドFM

音楽の言語化

今日は音楽の言語化についてお話したいと思います。
まず、言語化とは何か、というと、

言葉で表現する事。
感情や直感的なものを説明・伝達可能にする事

とあります。
自分が頭で考えている事を相手にわかるようい伝える事を、言語化という事ができますね。

では、言語とは何でしょうか。

一定の決まりに従い、音声や文字・記号を連ねて、意味を表すもの。

Oxford辞書

この定義に従うと、音楽、例えば、フルートなど平均律を使って演奏される伝統的なクラシックなどは、明確な文法がありますから、言語と言う事ができます。ジャズにはジャズの文法があるし、日本の古典には日本の古典の文法がある。つまり音楽の「ジャンル」は言語という事ができます。

ジャンルは越境する事ができるし、常に型にはまらず進化する要素もあるので、色々なケースはありますが、一つの見方として音楽=言語と捉えて間違いないと思います。また、例えば知らない言語を聞いた時、それは音楽に聴こえるかもしれません。言語と音楽の間には、密接な関係がありそうですね。—————————————————————

音楽の言語化は必要?

もうすでに言語の体を成している音楽を、
さらに言語化する事は必要なのでしょうか?

ヨーロッパのアンダーグラウンドのシーンでは、より純粋に「音」だけにフォーカスする、という流れもあって、パフォーマンスの場で、音以外の情報を排除するために、演奏者の紹介もなければ、いつ始まったのか、いつ終わるのかも曖昧な「Continuus Music」「永遠い連続する音楽」という考え方があります。

誰が演奏しているかもわからない、始まりも終わりもわからない、というのは極端な例ですが、 誰が演奏しているのか、どんな衣装を身につけているのか、何という曲なのか、などといった外側のパッケージをあえて強調しない美学。

ただ、そのシーンの中で演奏している分には、問題なく成立しますが、広く世界に語りかけようとすると、どうしてもどこかの段階で「説明・言語化」の現象が起きます。たとえ自分達で行わなくても、周りで広げてくれる人は絶対に言語を使う事になりますね。


言葉だけでは100%伝らない

言語、言葉の面白い所は、言葉でコミュニケーションをとっていても、実際、言葉そのものの情報だけで、完全に分かりあうのは不可能という事。仮に自分の思い込みだったとしても、自分の伝えたい事が通じたと思う時は、目で見るテキストだけでなく、話して聴かせたその声の抑揚だったり、語り手の身振り手振りだったり、その人そのもののエネルギーなど、複合的な要素がハマると、何か通じたような気持ちになります。

言葉だけ、しかも視覚の情報だけで伝わる例としては、例えば「立ち入り禁止」とか、そういった身の安全を守るための標識。これさえも、その書かれた文字のある環境と合わせて、初めて意味の共通認識が取れる所もあるので、言葉だけで完全にわかり合うという事は、現実的には不可能なのかもしれません。

音楽は、ジャンルの文法に従って構成していけば、言語になりますが、できる限り、その文法を排除する表現方法もあります。それでもやはり、そのスタイルで活動していく中で、どこかの段階では、人間が発音するタイプの言語の「通訳」が入るでしょう。

言葉だけで100%通じ合う事は不可能で、さらに、純粋に音だけのコミュニケーションでは広がっていかない。だとしたら、表現者本人が自分の音楽を知ってもらうきっかけとして言語化していく事で面白いつながりが増えるだろうと思っています。


他ジャンルとの相乗効果

最近、このような番組を含めてオンラインでの発信が増えてくると、一つのシーンだけでなく、様々な分野の方に気軽に発信が可能になります。その時に、何かつながるきっかけとして、言葉があっても良いし、音楽の本質を見つめて発信していれば、言葉によって限定されてしまう心配もありません。

言葉で表現できないから、このような音楽をやっているからこそ、色々な方と繋がってさらに相乗効果で広がっていくために、音楽を出来る範囲内で言語化していく事で、想像もつかないような新しいつながりが生まれる事になると思います。まして、私の言語力では到底音楽の魅力を語り切る事はできないので、心おきなくやっていこうと思っています。


芸術を言語化する事

表現者だからこそ、作品そのもので語る以上の事はしたくない、という所も多いに共感します。最近見た記事で、中島みゆきさんが「自分の曲の解説は嫌い」とおっしゃっています。参考記事はこちら▶️

また、マスコミ嫌いで有名なマスコミ嫌いで有名な「コム デ ギャルソン(Comme des Garçons)」のデザイナー川久保玲さんが、数年前テレビのインタビューで話題になっていた事も印象深いです。参考記事はこちら▶️

川久保さんは、コロナで世界全体が大変だからこそ、自分が前に出て話す必要性を感じた、とおっしゃっていました。

芸術の言語化は表現者の数だけ方法があるし、受信側も自由に受信するという事に尽きると思います。


Miya流 音楽の言語化

振り返ってみると、コロナ前は、なんとなく、日本のクリエイティブな音楽シーンの中で、どこどこに出演している、とか、誰々と共演している、という事が、ぼんやり自分の中でステータスになっていたのかな、と思います。

これからも、素晴らしい仲間と関わりながら表現を続けて行きたいと思っていますが、一度、音楽シーンがストップした事が、何にも属さない、どこにも縛られない自分のベースを作るきっかけになった事はすごく良かったと思うし、このベースを育てていくためにも、言葉でお伝えできる事があれば、ポジティブにその要素に関わっていきたいと思うようになりました。

現代美術家の村上隆さんは、2006年の著書の芸術起業論の中で、「身も蓋もない事で良いから、作家は自分の作品を言葉で説明するべき」という事を明確に書かれています。私はこの本を発売時に読んで、この事が印象に残っているのですが、それから16年経って、美術方面はますます言語化が馴染んできているように感じます。

音楽方面は、アーティスト自身が言語化するケースは、パッと思いつく所だと菊池成孔さんが道を切り拓いているし、南博さんも文才が素晴らしいです。巨匠・山下洋輔さんも音楽と執筆活動の両輪という印象があります。このように、すでにうまく行っているケースもたくさんあるし、これからもっとそういう方が増えるだろうし、私も色々な方と関わっていく事が本当に楽しみです。——————————————————————————————

積極的に言語化しようと思ったきっかけ

ここまでの話は、長年もやっと考えていた事で、最近はっきりしてきた事なのですが、もう一つ、全然関係ない方面から、もっと言語化に取り組んだ方が良いと思うきっかけとなる出来事がありました。

先日、次世代教育の指導法の勉強会に出席したのですが、その時、何か、それぞれの「ゴール」を実現するためには、明確な「ビジョン」を持って、 現状とのギャップを埋めていく事でゴールを達成する、という事を学びました。でも、それって、音楽に関わる全ての人が、自動的に、日々行っている事なのです。

目に見えない世界を扱う音楽は、「何を表現したいか」というイメージが一番大事になります。その見たことも、聞いた事もない「イメージ」をどうやって実現するか、試行錯誤して理想の音を作っていく、という事が音楽を奏でる、という事。

ですので、その説明会に参加した時は、「これ、全部知っているし、すでにやってる事だ」という感想だったのですが、逆に言葉の説明があって、初めてその事を自分で認知できた、言葉で説明されなかったら、自分がやっている事を体感ではわかっていても、情報としては知っている事も知らなかった、という事に気がつきました。


音楽と言葉 スピードの違い

ゴールの実現、という同じ現象を扱っていても、言語と、音や音楽の違いは、「スピード」です。

谷川俊太郎さんが、音楽は予言である、とおっしゃっていますが、音楽は、言葉よりもはるかに速いスピードで、体感として情報を伝えます。俊太郎さんはスピードの違いをおっしゃっているのだろう、と私は理解しています。


映像・言語・文字 それぞれの発信と受信のチャンネル

すでに体感として知っている事を、言葉に落とし込む=言語化ですが、言語化にも色々あって、この番組はYoutube(動画)スタンドFM (音声のみ) Note(文章)の3種類のメディアで展開しているのですが、それぞれの場で反応があって、やっていてもとても面白いです。

人によって、動画よりも音声の方が良かったり、文字で読むのが好きだったり、その時の環境もあるかと思いますが、情報の受信や発信にそれぞれの得意分野、というのがあると思います。


100%(以上)伝わる事もある!

受け取った情報を言葉でアウトプットする能力が非常に優れている人々を何人か知っていて、そういう方から私の音楽の感想をいただくと、100%自分が伝えようとしていた事、時にはやりたいと思っている事すら知らなかったやりたい事まで、受け取って下さっていて、そういう例が一つではなくて、何人もいらっしゃるので、たとえそれが音楽であろうと、言葉であろうと、伝わるものは伝わるという確信もあります。

これからも、色々なスピードを使い分けて、音の波をサーフィンするように楽しんでいきたいと思っています。

では、また次のフルートカフェでお会いしましょう!
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