見出し画像

あの日、君は何をした まさきとしか

人は皆不完全で、今自分が幸せに満ち足りている日常を過ごしていても何かの拍子に衝動的な感情に駆られ、取り返しのつかないことを起こしてしまうかもしれない。

この小説は、1人の殺人犯が刑務所を脱獄するところから始まる。深夜に目撃情報があり警察が周囲を捜査しに行くと、1人の自転車に乗った中学生を見つける。声をかけるも少年は逃走し、逃げた先でトラックに轢かれ死亡する。その後、目撃情報がなく、捜査が難航したことで「非行少年」のせいで犯人を取り逃たと冷たい意見が飛び交った。
小説のストーリーは事件の後、少年の家族に焦点が当てられる。少年(水野大樹)の母、水野いづみは自分の家族が誇らしかった。自分が用意した夕飯を家族が「おいしい」と嬉しそうに食べる姿が好きで、自分がこの上なく幸せなことを世間に大声で話したいくらいだった。しかし、事件が起き、大樹が亡くなったことで家族関係は一変する。なぜ大樹は深夜に外に出ていたのか、自分の知っている大樹は大樹ではなかったのか、答えが分からないまま水野いづみは壊れていく。

人は皆不完全である。完璧を求めるが故に、一つの失敗、一つの疑問に囚われてしまう。この本は、大きく2つの事件から成っている。その2つのどちらにも事件のことが受け入れられず壊れていく人間の様が描かれていた。
事件が起きた後も、自分の日常を守るために気にせず生きてゆくか、囚われたままで周りのものに疑惑を感じながら生きるか、読みながらそんなことを考えさせられる小説でもあった。

ストーリーの流れが素晴らしく、息継ぐ暇もなく読めてしまった。
ミステリーや伏線回収が好きな人は読んでほしい一冊である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?