疑問を面白がれたら人生は楽しくなる

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 疑問を持つことは、人生を面白くするうえで欠かせない要素である。

 そもそも世の中には不思議なことがたくさんあるのに、疑問を持たなければそれらを不思議だと感じることさえできない。 

 「地球は丸いのになぜ南半球の人たちは落ちないのか」とか「羽があるのになぜ鶏は空を飛べないのか」とか、こんな疑問は大人になると消えてしまうが、大人になっても抱き続けた人が学者になったり、ずっと夢を諦めずに追いかけていたりするのかもしれない。

 子どもの頃、イソップ童話の「ウサギとカメ」を読んで、「なぜ野原を駆け回るウサギと水中を泳ぐカメが競争なんかしたんだろう?」と疑問を持った少年は、大人になって加藤諦三(たいぞう)という著名な心理学者になり、その疑問に答えを見出している。(日本講演新聞2018年8月27日号掲載)

 「疑問が大事」とは言え、それには二種類あるように思える。
一つは、たとえば「なんで古文を勉強しなくてはいけないのか」とか、「数学の方程式なんて要らないんじゃないか」というような、嫌なことを拒否するための疑問である。
好きなことだけをやって生きていきたい人は、こういう疑問を抱きやすいが、結局自分の好きなことを見つけられなかったりする。

 もう一つは、冒頭に述べた「人生を面白くする疑問」である。
それは大方、好奇心から発せられる。
好奇心を持ってさまざまな世の中の不思議に疑問を抱くと、何事も面白がれて、楽しい人生になるのではないだろうか。

 そういう意味では本屋さんは面白がる人たちが集う「知的アミューズメントパーク」だろう。
お目当ての本が決まっている時はネット通販も便利だが、それはただの「買い物」だ。
本屋さんはお目当ての本がなくても、ふらっと立ち寄るだけで、「面白そう」という好奇心の種がいくつも芽吹くから堪らない。

 先月出会ったのは「お嬢さん、なにゆえそこに?」という副題の付いた『街の裸婦考』(言視舎)という本だった。

 著者の川副(かわぞえ)秀樹さんは、デザイン事務所経営を卒業して、人生を趣味の民俗学のほうにシフトさせ、民間神仏研究の本を書いたり、「東京発掘散歩隊」と称して、有名無名の史跡などを訪ね歩いたりしている。

 そんな活動中にふと疑問に思ったのが「街中にやたら裸婦像が多い」ということだった。
そこから著者の好奇心はどんどん膨らんでいき、一冊の本にまとめられた。

 「裸」に対して私たちは「絵画や銅像の裸は芸術だ」と刷り込まれている。
これに疑問の余地はない。
写真は微妙で、撮影する目的と動機によって芸術とエロに分かれる。

 ただ芸術的なヌード写真も絵画も無分別に公開されることはないが、裸婦像は駅前や公園、図書館など、公共の場に設置されていることが多い。
著者はここに疑問を抱いた。
「誰が、どんな意図で、この場所に置いたのか」と。
そして東京都内に設置されている77体の裸婦像をカメラに収め、一つひとつ解説している。
芸術的な解説ではない。ごく普通の中年オヤジの感想である。

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