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6畳1Rのお城



2年程付き合った彼と過ごした日々は

私が23年間生きてきた中で

忘れられない2年間だった。


嬉しいことがあった日も、
悲しいことがあった日も。

全ての時間と感情を分け合った。

喧嘩をしては体を重ね、
手を出されては体を重ね。

私が死のうとした時は
体を交わしながら朝日を迎えた。


彼の家は六畳一間で
綺麗とも広いとも言えなかったけど

私と彼のお城だった。


学校に行かない日は、
小さな窓をあけて差し込む太陽と
少しの風と、それに揺れる洗濯物を眺めた。

彼とベッドに寝そべりながら
ただ1日が過ぎるのを待って

お腹が空いたら自転車で二人乗りをして
ご飯を買いに行った。

夜ご飯は何にするか話しながら、
坂道を下った。


誰にも邪魔出来ないと思ってた。


彼と3度目の冬を迎えそうになった頃
突然終わりを告げたのは私の方だった。


その頃
「絶対」も「永遠」も「一生」も
無いものだと気付いた。


私が彼から離れていく気持ちを分け合うのは
居心地の良いものではなくて、

耐えられなくなった私は泣きながら別れを告げて


私のお城だったはずの場所は

「なんでもない場所」

に変わった。


まだ気持ちが子どもだった私は、
突然別れを告げられて泣いてた彼の気持ちも
その後
私との思い出が沢山ある部屋にいる彼の気持ちも
夜中に電話をかけてくる彼の気持ちも
考えることが出来なくて。

最後、部屋から見送る彼の顔だけが今も

頭から離れなくて。


今でも一緒にいたら
私はどんな「私」になってたんだろう。


私のお城は今でも残ってたのかな。



この先、どんな人と出会っても

彼のことは忘れないだろう。


私の全てを捧げて、全力で愛した人だった。

全て失ってもいいと思ってた。


そんな私を創り上げた彼が死ぬほど憎くて
死ぬほど愛おしい。


どうか私よりも幸せになって見返して。


新しく愛した人を、私よりも愛して。


私も新しい恋をして、

新しいお城を築きたい。



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