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エレカシ新春ライブ「待つ男」

 先日、WOWOWでエレカシ新春ライブを観た。一昨年、足を運んだ東京フォーラムでの新春ライブが遠い昔のように感じる。会場はマスクをした観客で埋め尽くされていた。今では普通になりつつある異様な光景。それでも、ライブはそんな空気を一掃するかのように、いつもと変わらず、真摯な熱量溢れるパフォーマンスで一気に引き込まれた。なかでも、アンコールの「待つ男」は特別だった。私の大好きな一曲で、今このタイミングで聴けるとは思ってもいなかった。エレカシならではの独特の世界観と表現力。その場にうねりを起こすような粘り強い、唸りともいえるような歌声と演奏は、腹の底に着くような、足の裏に吸いつくような不思議な感覚を覚える。とにかく、この形容しがたい重量感が堪らない。普段でも不安でソワソワしてしまう時には、「待つ男」を聴く。そして、この曲がシッカリと地に足をつけてくれる。

ああ 外をながめれば かすむ空気と人のつぶ
なにやってんだ あんた
何をあわてて ぶざまにこける
そら ちょっと見りゃ 富士に太陽ちゃんとある

この一節が、不意打ちのような出来事に遭遇して、早急に何とかしようと慌てふためく自分に対し、それを俯瞰している宮本浩次が声をかけてくれたような気になる。
『なにやってんだ あんた ちょっと見りゃ 富士に太陽ちゃんとある』との言葉が高速で渦巻く空回りした思考を止めて、現実に引き戻し、碇を下ろしてくれる。「ああ、富士山も太陽もちゃんとある。天地がひっくり返ったように感じているのは私の気持ちだけで、目の前の世界は何も変わらずドッリシとそこにある。先ずは、今出来ることを自分の手足で着実に1つ1つやるだけだ。」そう確認することで、不安に踊らされている気持ちを静め、払拭する。こんな時代だからこそ、しっかりと現実を見つめて不安と心中することなく過ごしていきたい。そんな心強いエールをもらったアンコール曲「待つ男」。私にとって今年一番のプレゼントになった。

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