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金曜日の郵便物

 金曜日に仕事から帰って郵便ポストを確認すると、丸々と膨らんだ長3サイズの封筒が入っていた。私宛の郵便物で、差出人は夏前に参加した改正DV防止法に関する講演会を主催した女性を支援するNPO事務局からだった。中には、送り状、会報誌、11月にある講演会のチラシ2枚、先日寄付した際の領収書が入っていた。

 講演会は知人からのお誘いを受けての参加だった。こういった講演会に参加するのは初めてで少し緊張して会場となる県の合同庁舎に向かい、大会議室に入ると席はほぼ満席で、参加者の9割強が女性だった。県との共同開催だったので市役所等の職員も参加されていて、改正DV防止法の説明時には熱心にメモをとり、質疑応答でも積極的に質問されていた。多くの参加者が当事者や関係者だったと思う。そして、NPO代表者をはじめ、運営スタッフの多くや講演者である大学教授も、配偶者や家族としてDV被害の当事者だった。そして、そのような皆さんがとても穏やかに淡々と実状や経験までお話しをして下さったのが印象に残っている。テレビでは勇ましいフェミニストの方ばかり拝見していたので不思議な気持ちになった。率直に言って現場と言論界隈の違いに驚いた…。やっぱり、リアルは地味で冷静なものなのかもしれない。

 支援活動については「これまでは、被害者の一時保護や自立支援に力を入れ軌道に乗ってきたけれど、今後は被害者の心のケアと加害者の更生プログラム支援が課題。」というお話しがあった。そして今回届いた案内はまさにそのような内容の講演会だった。有言実行というか、機動力というか、凄いなぁ…と思った。

 この前の講演会で代表の方が「今まで数々のDV被害者と接してきて、9割の方は精神疾患を患っているように感じる。」と仰っていたが、私も身近でパートナーとの困難な問題を抱えている人を見てきて感じることがひとつあった。相談ということで彼女達の辛い胸の内を聞くと、溜め込んだ感情だけでなく、更に生産され続けているようにとめどなくドロドロとした思いが出てくる。聞く方が参ってしまうくらいに時間も状況もお構いなしに同じことを何度も繰り返し、繰り返し訴える。そして「今日は申し訳ないけれど話しを聞くことが出来ない」などと断わると、冷たい酷い人だと感情を爆発させる人もいた。こんなに辛い思いをしている自分は、優しく話しを聞いてもらって当然だというような態度と、こちらに罪悪感すら持たせるような言動。そこでオヤッ…と気付く。

 このように、自身の揺るぎない正当性を柱にして、相手への容赦ない要求、自分の感情の爆発も相手に原因があると譲らないところはまるで加害者の姿と同じように見えてしまう。そして、私にはそれが当人には気付くことの出来ない心の歪みのように感じ、自分だけの狭い意識に追いつめられている姿は病にも思える。

 幼い頃からモラハラ、DVの家庭で育ってきたので、加害者、被害者両方とも長い間見てきた。そこで気付いたことは、被害者は勿論、加害者すら強い被害者意識を持っているということ。そして、この強い被害者意識が、更に被害者を産んでいく。また、このような環境での母子関係の問題もこういった構造から産まれていくのだと思う。そういった面を考えても被害女性のメンタルケアは重要だと思う。

 最後に講演会で胸に刺さった言葉がある。「現場で相談にのる問題は世間に知られる10年先をいっている。」との言葉。こうして、最前線の現場で世間に認知される以前の問題とも日々向き合って支援して下さる団体や人は本当に有難い存在だと改めて思うことになった。

 

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