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「時代はBIMらしい」~一級建築士を持っているだけの凡人がいきなり設計部になった話♯5

4月から「BIM」を扱う部署に異動になりました。
(一応設計部ではありますのでタイトルはそのままで。。)


日本の建設業界ではここ数年、「BIMを導入して品質の高い設計を!」みたいな志をちらほら耳にします。

なんとなく、「あ~3Dのやつね~」「生産性向上とかDXとかで流行りのやつね~」みたいなことが浮かびます。
「BIMってなんだっけ?」と聞いてくる人もしばしば。


その反応も当たり前で、日本ではBIMってものが本当に流行っていないんです。
業界の普及はまだ半数程度とか言ったかな…で、BIMの特性を十分に活用できているプロジェクトはほんの一握りだけなんですね。

海外では2005年くらいから普及し始め、今では50~90%以上のプロジェクトでBIMが活用されている国も少なくないようです。

しかしこのDXの時代。
円安で政治経済不振で先行き不安で地震も心配な日本も、取り残されるわけにはいきません。
「我が国も本格的に!BIMやりますよ!!」
とのお触れが国交省から出ているわけです。

で、話がちょっとそれますが私はというと。
構造設計者に、オレはなる!…ってこぶしを振り上げていた矢先、辞令が出てしまったわけです。

もう両腕と心がポッキーンでして。
私の情緒だけが航海に出ちゃいまして。
…というくらい、辞令が出たときは数日間海の上にいるがごとく気持ちがゆらゆらしていました。

今年からスタートアップの部署なんですけど上層部いわく、施工も設計も経験がある(調度良い)人材を配置したいと。
はい、会社のイヌでございます。
建築士の資格、池ポチャでございます。


私があまり乗り気じゃないのは伝わったと思うんですけど(おい)今後の建設業界では知らないとどんどん遅れをとってしまう代物ですので、気を取り直してお送りしようと思います。

すげーんだゾ!BIMって!




1.とりあえず、BIMって何?

BIMとはBuilding Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)の略称。

BIMをやってる人に怒られるくらい簡単に言うと、
「3次元モデル」のデータを使ってプロジェクト全体を回すこと
です。
まずはこれだけ覚えてくれればオッケー◎

細かい説明をすると、CADなどの2次元図面に対しBIMは「3次元モデル」が主軸です。
建物の計画から設計、建設、運用に関わる全ての情報を「3次元モデル」統合し、管理することができる優れものです。

つまり、何もない状態から建物が建って人が生活するまでの情報をまるっと1つのデータに入れておけば管理しやすいよね!って魂胆です。
これにより、効率的な設計や建設を行うことが可能となります。

2.従来のCADとの違い

CADソフトなら使えるよって方は多いのではないでしょうか。
Jww_CAD、Auto CAD、DRA-CAD…種類はいろいろありますが、今建築業界にいる方は何かしらのCADで図面を書いています。

さて、このCADとBIMでは何が違うのでしょうか。
2次元と3次元の違い…だけではないのです実は。

CADは「複数のを書くことで建物や仕上げの形状を表現している」のに対し、BIMは「コンピューター上に現実と同じように部材が配置されている」ということ。

ん、つまり?

CAD図を作成する場合は、線を2本描くと壁ができて、四角を描くと柱ができます。
さらに符号を書き入れて、WとHを入れれば
あらわかりやすい。
…慣れている人にとっては。

BIMはというと、壁を置きたい場所に「壁という属性の素材」を置き、柱を置きたい場所には「柱という属性の素材」を置きます。
これを繰り返すと何ができるかというと、作ろうとしているものと同じ建物がコンピューターの中にできちゃうんですね。
建築を知らない人にとってもわかりやすいですね。

驚くことに、線という概念が無いんです。
マウスでプラモデルを作っているような感じですかね。


以上より、ただ平面か立体かの違いだけではないことがお分かりいただけたと思います。
さらにさらに発展させると工程コスト管理、維持管理シミュレーションやARなど、3Dを超えたところまで広げることができます。
ここはまだ取扱いが難しいというかやっていないので、やるようになったらまたお話しします。


3.フロントローディングという考え方

主にIT業界で使われてきた言葉のようですが、建設業界ではBIMが導入されてから使われるようになりました。
意味は「設計の初期段階で負荷をかけることで、後々のプロジェクトを円滑に進めていこう」ということです。

通常1つの建設プロジェクトは、計画→設計→工事って建物が完成するまでに数年単位の時間がかかります。
そんなに時間を費やしているのに、設計図書の提出前だとか、工事の竣工間際だとか、期限前っていつもバタバタするんですよね。

具体的に言うと、設計図って工事が始まる前にはもちろん完成しているんですが、細かい部分が決め切れていなかったり、確認不足で工事が始まってから問題に気付くなんてことが多々あります。


そこで、フロントローディングの考え方の出番です。
「忙しくなるんだからできるものは先にやっておこうぜ」ってことで、こちらの考え方では最初の段階に事細かい決めごとや設計図の作りこみや工事のシミュレーションなんかを行います。

フロントローディングでは最初の段階で時間も人もかかる代わりに、プロジェクトが動き出してからはスムーズに、間違いを減らし良い品質のものをゆとりをもって作ることができるんです。

それらに一躍買うのがBIMってわけです。
今ままでの2次元図面やパースからは想像がつかなかったものや細かい納まり、問題の抽出が3Dモデルでは容易になるためフロントローディングととても相性が良いのです。


4.目標は「一気通貫」

BIMに携わるようになってから笑うくらい聞いた「一気通貫」という四字熟語。
なんでそんなに聞くかっていうと、BIMはそこを目指しているんですね。

BIMでいう一気通貫とは、建築プロセス全体にわたって情報を連携させることを指します。
建物の設計から建設、運用に至るまでの各段階でのデータや情報を一元管理し連携させることで、効率的なプロジェクト管理や意思決定を実現することを目指します。

今までは、それぞれのプロセスで必要な人がそれぞれでデータを持っている状態でした。
そして情報共有といったら、メールのやりとり。
どれが最新だの、その図面は古いだの、いつのメールかだの、人の記憶と労力に頼ってたんですね。

これがBIMに代わるとどうなるかというと、
関係者全員が1つのBIMモデルを共有しており、そのデータを見に行くと全情報がわかる!となります。

スムーズな情報共有、コミュニケーションの行き違い防止、会議の短縮など、生産性向上にも繋がりますのでますますやらない手はないんですよね。


5.まとめ

ここまで、BIMとはどんなものか、どれほど革命的で素晴らしい代物なのかを書いてきました。
すごいでしょ〜BIMって。
私も書いててだんだんBIMさんが好きになってきました。

「お、どんどんやればいいじゃん!難しそうだけど。」
皆様もきっとそんな感想をお持ちいただけたはずです。

その通りなんですよね。
どんどんやりたい!

…のだけれど、、、「難しそう」の比重が大変大きい。
最初にも書きましたが、本当の意味でBIMを使いこなせているプロジェクトなんて今のところほんのわずか。

なぜなら、計画、設計、工事、維持管理とそれぞれ扱う人が違うため、それぞれの分野でのエキスパートがBIMを扱える力が必要になってきます。

ただでさえ建設業界は人手不足で仕事もひっ迫しているのに新しいことをやるなんて…。
おじいちゃんにiPhone渡してTikTokデビューさせるくらい難しいことなんですね。
ゆえにBIMの導入がなかなか進まないんですよね。

最後でそんなもどかしいことを言ってしまいましたけど、まぁそういう苦難の最中だと思うんですね今は。
転換期っていうのはいつも大変なもので、反発も起きればなかなか前にも進めない。
誰かが踏ん張らなければいけない。(会社の上層部はやれしか言わないし。)


まさに今BIMを扱ってる人は前進すべく頑張って欲しいですし、今はまだ馴染みがないよーって人も、ちょっとずつでいいのでいろいろな情報を気に止めて欲しいなぁと思ってます。

日本の建設業界に幸あれ。



…ってことで、ありがとうございました。
私はもう構造設計者でもなんでもないですが、とりあえず工事の経験と1年間の構造設計の経験を活かしてなんとかやるか〜となっている所です。

私は常々、本当の意味での残業短縮や生産性向上を実現して暗黒な建設業界(とりあえずうちの会社)をなんとかしたいと思っています。
ここに来てBIMという武器を得たので…ちょいとやってやろうじゃありませんか。

という豊富(?)で締めさせて頂きます。
ありがとうございました。


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