C005-『それいけ!アンパンマン おもちゃの星のナンダとルンダ』
引き続き子ども達と鑑賞、今回は2016年公開『それいけ!アンパンマン』の映画版『~おもちゃの星のナンダとルンダ』。
あらすじをamazonさんのモノをそのまま引用させてもらうと…
おもちゃの星のお姫様・ルンダは“みんなが自分のために何かしてくれる事が当たり前"と思っているワガママなお姫様。
そんなルンダはやさしいロボット・ナンダといつも一緒。
ある日、ルンダは色んなものをおもちゃに変えられる大事なおもちゃスティックを落としてしまいます。
アンパンマンたちと一緒に砂漠や海の中まで探しに行きますが、なかなか見つかりません。
そこへ、おもちゃスティックをねらってばいきんまんがやってきたから、さぁたいへん!
…とのこと。
まぁだいたい、そんなあらすじです。
これから書くのはそのレビューなので、もう少し詳しく書いていくと、
なくしたおもちゃスティックをさがして(アンパンマンワールドの)地球に降り立ったナンダとルンダ。ところが、突然の落雷に遭い、二人は離ればなれに…。
翌朝、ルンダはばいきんまん達に、ナンダはハイキング中の子ども達(クリームパンダ、チビぞう、カバオ)に、それぞれ発見される。
ルンダはおもちゃスティックを求めて、ナンダはおもちゃスティックの信号を頼りにルンダを探し、遂に二人は(割と早く)再会する。
ところが、おもちゃスティックを悪用したいと考えてるばいきんまんとのスティック争奪戦が開始。
砂漠・流砂を抜け、坑道を駆け巡り、海底深くまで突き進み、石の神殿が建つ無人島で最後のスティック争奪戦が始まる! …という展開。
他の映画『それいけ!アンパンマン』と比べても、かなり話の密度が濃いめの作品でした。
非常にテンポがよく、流砂に飲み込まれてからのスピード感はハリウッドのアクション映画も顔負け(笑)。
しかも見せ方がなかなかイイ!
流砂を突き抜け、地下坑道に着いたばいきんまん(とルンダ)。運良くばいきんUFOは線路に乗り、そのまま坑道をひた走っていく。
次いで流砂を抜けたナンダ。そのまま顔の どアップになり、瞳(ロボットなのでカメラアイ)が画面いっぱいに映るが、その瞳には坑道の線路が写っている。これだけで『ナンダが何を見ているのか』が分かり、次のカットではナンダが機関車形態にトランスフォームし、線路上に着地(さりげなく子ども達を機関車の乗車位置に移動させてくれている)。そしてそのまま発車、ルンダを追いかけていく。
もう、このテンポよい数カットだけでワクワク感倍増である。
追って、アンパンマン号に乗った主役の面々が到着するが、ここでジャムおじさんが一言、「地下坑道だ!」
…なんというか、このぐらいのシンプルな台詞でいいんですね(んでもって この展開の中、ほとんど彼らに出番はない)。どんどん画で見(魅)せてくれる。
でもこのあと、地下坑道のはずが『魔宮の伝説』なんて目じゃぁないジェットコースター線路状態になり、その中をぐるぐる回りながら追い抜け追い越せを繰り返すが、ヌラ(海獣)などの横槍が入り、ひとまずおっかけっこは終了。
アンパンマンに助けられたルンダは無人島にたどり着き、そこでしばしのクールダウンとなるのですが、この辺の見せ方も『アンパンマン』とは思えない演出で。
アンパンマンとルンダ、一対一で話をするのですが、ルンダの心情の揺らぎを表すためか『ルンダ(またはルンダ寄り)の視点』の時だけカメラを斜めにして撮ったような表現になる。
ワガママし放題だったルンダにとって、アンパンマンの行動が不可解に見えたのか、短い間ながら、ここでのアンパンマンとの対話が後の展開(行動)の後押しとなる重要なシーンなのでしょうね。にしても、カメラワーク?とか、とても子ども向けアニメとは思えない表現がいくつも詰まってます。
順不同でいくつもの映画版『それいけ!アンパンマン』を見てるので、『映画用の物語の傾向』というのは説明できません。
ただ、往々にして、
①(アンパンマン達が)出先でトラブルに遭う。
②ゲストキャラがトラブルを持ってくる。
③ゲストキャラに会う→同行し、トラブルに巻き込まれる。
この三つ。(三つ目は余計かな?)
『涼宮ハルヒの消失』のように(成長物語でもないので)既存のキャラがトラブルを生むような展開は、さすがに『それいけ!アンパンマン』なので(おそらく知りうる限り)ない。
あくまで成長するのはアンパンマン・ワールド(概ねテレビシリーズ)の外にいるキャラだけだ。
今回も、おもちゃの星からやってきたお姫さま『ルンダ』がその役を担うお話なので、上で言うところの②にあたるお話といえる。
以前、映画評論家の町山智浩さんが『ローマの休日』の解説をされた時に、あの映画を「アン王女の成長物語」と話されていた。
映画冒頭での王女は睡眠前にクッキー(ビスケット?)を食べ、ホットミルクを飲んで寝るが、それはまさに『王女がまだ子どもである』という隠喩としてあるという。なので、グレゴリー・ペック扮する新聞記者と出逢い、そして『自分が王女である』という自覚を持ち、彼と別れ、帰ってきた時には、クッキーもミルクも自分の意思で拒否していく。
本作で、ルンダは護衛のロボット・ナンダに自分のゼンマイを捧げるルンダ。復活したナンダは、アンパンマンと共にばいきんまんを倒しますが、ゼンマイを手放してしまったルンダは動かなくなってしまっていました。
両手でルンダを抱え、涙するナンダ…。
……と、ここで空からゼンマイを思わせる渦巻き状の光の粒が舞い降り(…これだけ謎展開ですよね)、新たなゼンマイの力を得てルンダちゃん復活っ!
ついでに髪もおろして、お姫さまな風貌に!
もう、その風貌を見てると、ふと『ローマの休日』を思い出してしまいましたね。
ラストはかなり無理な展開でしたが、なかなかに胸熱な映画版『アンパンマン』でした。
話題に上がることはないでしょうけど、「推しの映画『アンパンマン』は?」と聞かれたら、「(アクションが面白い)映画の『アンパンマン』なら『もちゃの星のナンダとルンダ』」といえるようなお話でしたね。
最近、子ども達がテレビ版でなく、映画版の『それいけ!アンパンマン』しか見なくなってきました。
…父親の影響かな?
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