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25.悪魔のささやき


 
 週末、久しぶりに女友達と集まった。みんなそれぞれ仕事に家庭に忙しいが、年に数回、会えばなんでも話せる高校時代からの親友三人組だ。
 
 「最近どうよー」
 気だるい感じでいつもそう聞くFは、二年前に離婚。子どもはいないから、シングルライフを満喫中だ。
 「相変わらずかなー。Fは今カレシいるの?」
 わたしと同じ、夫と子どもと暮らすYが尋ねる。
 「こないだまではね。しつこいから飽きちゃった。わたしもう、一人としっかりって無理」
 「わかるー」とY。
 「え〜!Y、旦那さんいるじゃん」とわたし。
 「え、それとこれとは別でしょ。わたしいるよ、ボーイフレンド」
 事もなげに、Yが言う。
 「カラダの関係はギリないけど、寸止めで焦らしたりするの。すっごく興奮するよ。こないだなんて会ったあと、ひとりで4回もしちゃった」
 何それ!と盛り上がるF。
 わたしはこの非常に気になる話題にドキドキしながら、平静を装って聞く。
 「寸止めって、どゆこと?」
 「わ、M食い付いた!」
 「んー、まあ色々あるけどさ。やっぱり面倒なことにはなりたくないから。いいとこ取りっていうのかな。お互い割り切って、距離感保つの。触らない、キスもしない、でもすごく惹かれてる。帰り道パンツすごいことになってるよ」
 「やだーもうYったら!」
 「そんなのって可能?」
 「まあ、我慢比べってとこだよね。でもそのほうが優しいよ、オトコって」
 「一理あるな」Fが頷く。
 「カラダの関係持っちゃったら、終わりじゃない?ズルズル深みにハマってどんどん欲深くなる。もっともっとって。相手の家庭も自分の家族も傷つける。心と心の関係ならば、証拠なんて何もないもの。でも一線超えたらどちらかと別れる覚悟が必要だよ。わたしはそうやって、女と妻と母親を保ってる」
 
 「わあ…メンタル強いなあ、Y」
 「やってみなよ、Mも」
 
 人生一度きりだよ、なんて笑って言うYは、女のわたしから見てもとてもセクシーだった。


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