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17. 帰って来たのは…


 
 「じゃ、行ってくるねー。帰るときにメッセージするよ」

 土曜日。今夜は夫がDを含む男友達と飲みに行くことになっている。
 「はいはーい。気をつけてね」
 なんて送り出したものの、気が気じゃないわたし。なにもやましいことがあるわけではないのに、夫とDとの間で交わされる会話が気になってしまう。まあでも、男4人だし、とくにわたしの話題もしないでしょう。
 息子を寝かしつけ、ソファーでゴロゴロしながらも、あれこれ想像しては、違うことを考えようと脳を使っていた。
 
 夜10時を回った頃、玄関のドアが開く。
 あれ、メッセージ来てないし。…さては酔っ払ってるな?
 「意外と早かったね」とリビングのソファー越しに振り返る。

 と、そこには…
 夫と共に靴を脱ぎつつあるDの姿があった。
 
 「他の2人は明日家族で出かける予定があるって帰っちゃってさ。Dさんとどこかで飲み直そうって話になったんだけど、ちょうど近いからって、誘っちゃったよ。あ、適当にするから、Mは気にしないでいいからね〜」
 なんてのほほんと言う夫。ほろ酔いのDも、「どうも〜」なんて、いつもより軽い挨拶をする。
 うちに連れてくるとは。
 計算外も計算外。
 予想外も予想外。
 
 無防備、かつ、まったくセクシーとは程遠い、部屋着姿で迎えてしまった。
 終わった…いや、始まっても、いないけど?
 無下に響く頭の中からのツッコミを聞きながら、わたしはいそいそとキッチンへ向かった。
 

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