27.ゆるむ心と涙腺
歓迎会は思いのほか楽しくて、いつもより飲んでしまった。
あんなことをトイレでしてしまった後、何事もなかったように席についたわたしのもとへ、暫くしてDが来る。
「気分、大丈夫ですか」
「あ、はい、全然大丈夫。楽しくて、たくさん飲んじゃいました」
Dも程よく赤ら顔。
「この部署、ほんと良い人ばかりで、仕事もやりがいあると思いますよ」
「ほんとに…何から何までありがとうございます。いつかちゃんとDさんに恩返ししたいです」
「ははは、恩返しですかー。そんな、気にしなくて良いんですよ。持ちつ持たれつです」
いけない。飲みすぎたせいで、ついうるうるしてしまう。
涙目のわたしに気づいたのか、Dが小声で言った。
「ちょっと、出ましょうか」
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