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リソグラフの温度感/テキスタイルデザイン「candy ribbon」の話

布・生地の通販サイトnunocotofabricさんより発売中のテキスタイル「candy ribbon」では、暮らしにちょっとしたウキウキをもたらすデザインをコンセプトに、キャンディーのような小粒のリボンを弾むように構成しました。

「candy ribbon」はリボンのみのデザインと、ドットとコンビの2種類展開です

こちらのデザイン制作では、リボンだけの限られたモチーフで、いかに可愛く楽しく、そして使いやすいデザインにするかが課題となりました。
そこで工夫したのはリボンの形と質感、そして配置の仕方です。

まずは自分がどんなリボンをかわいいと感じるのか、絵本や雑誌、ネット検索などでリサーチを重ねました。そうして出会ったのがlusikka(ルシッカ)さんのオンラインショップです。丸みとふくらみのある形が、私が日頃デザイン制作で大事にしている「愛嬌があること」につながると感じました。

リバティ リボンゴム/lusikka(ルシッカ)

ひとつひとつハンドメイドで制作されているlussikaさんの商品。フィンランド語でスプーンを意味するブランド名は「スプーンひとさじのしあわせが伝わりますように」との思いが込められたネーミング。「こどもの手にわたったときに、こどもとママがうれしくなるもの」をと、お子様向けのアクセサリーを中心に販売されています。lussikaさんはこどもビームスでもお取り扱いがあり、ご自身も2児のママだそうです。
(余談ですがサイトを見てたら私もつい欲しくなって、くまさんのビーズブレスレットを購入しました。)

そうして画像を参考に描いたイラストがこちら

アクリルガッシュで描きました

要素を減らすため、ゴム部分は抜きました。
そして、リボンのシワと輪郭を、滑らかには描かず、
「ちょっとぶきっちょな未就学児の女の子」
といった人格的イメージで描きました。

この形から、使いやすいテキスタイルデザインへ昇華するために、
さらに一手間加えてみます。

布にプリントされたデザインは、巾着やワンピースなど、様々な形へと変容します。その際に、私の描いたリボンが押しつけすぎずに愛着を醸し出せるようにしたかったのです。
例えるとレトロな雰囲気です。

そこで利用したのがリソグラフ印刷でした。

リソグラフ印刷は、版に微細な孔(あな)を開け、
そこからインクを押し出すデジタル孔版印刷です。
1色ごとにデータで版を作って重ね刷りするため、版ズレが起きたり、
インクの濃度や紙の組み合わせによってかすれやムラが出たりと、
独特な味わいのある仕上がりとなります。
(リソグラフは理想科学工業の登録商標です)

そのリソグラフ印刷を初心者でも気軽にお試しできるのが、
大阪にある印刷会社、レトロ印刷さんの試し刷り
リボンのイラストをデータ化し、桃色のインクで試し刷りしてみました。
(インクは34色の中から自由に選べます。)

アクリルガッシュで描いたイラストをリソグラフで印刷したもの

アクリルガッシュで描いたイラストと、雰囲気を比較してみます。

上がアクリルガッシュ、下がリソグラフです

リソグラフ特有のかすれやムラによって、リボンの雰囲気に温かみがプラスされた印象を受けます。ではリソグラフ印刷によるリボンを使って、テキスタイルデザインを制作してみましょう。

データ上のcandy ribbon

リボンを小粒のキャンディーに見立てて、リボンがウキウキ弾んでいるように布一面に散りばめました。

candy ribbonはレッスンバック制作にピッタリです

1枚として同じにならない、偶然性が長所のリソグラフ。いつものイラストや写真をリソグラフにすることで、新しい発見が得られます。国内には各地にリソグラフのスタジオがありますので、実際にご自身で体験されるのはもちろん、今回ご紹介したレトロ印刷さんの試し刷りを利用して、作成データと仕上がりの研究を重ねるのも楽しいです。あなたの表現の選択肢に入れていただけたら幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました!
それではまた次回のデザインでお会いしましょう。

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