鑑賞雑記「片恋問答」

水面に広がる波紋のように
幾重にも重なる
流麗な言葉たちと共鳴してきました。

言葉を発するたび
水面が揺らいで円を描き
幾重にも残像を重ねていくようでした。
指でそっと撫でるように
やさしく奥の方をくすぐるように。

女流作家とメイドの
問答を通して物語は
展開していきます。

空間に響く
ハイヒールの足音は
高鳴る鼓動とリンクしながら
リズムを刻み
私の思考と感情は一気に
温かく深い淵のなかへと
引き摺り込まれていくのです。

そして、心地よい重力を指先まで
感じていることに気づくのでした。
そうやって
美しい軌道共鳴を続けていると
急に微笑みを感じた気がして
その途端、一気に外へ飛びたし
空を舞う感覚に。

ふわりと着地するとともに
恋の淵を
恨めしそうに
見つめる自分がいました。

美しい二人と
小悪魔的な展開に
すっかり虜になりました。

「好意は凶器」
残り香に誘われ
秘めたる胸の高鳴りは
暫く続きそうです。

つまり。
好きってこと。

【公演詳細】
かわせみのいた森
　　presents ふたりがたり
「片恋問答」
作・演出：森田翠
出演：森田翠、瀬戸ゆりか(青年団)
2022.12.16-17
於：ほとり座