喪失の特権

マイナスなことは無い方がいい。
負の感情は出来るだけ脱ぎ捨てて、軽やかに生きていたい。
そう思ってしまう時もあるけれど、人生には喪失の特権がある。

街並みがセピア色に見えたり、ふと去年の匂いを感じたり、後ろ姿を見間違えたり、捨てられない片方だけになったピアスみたいな、哀しみを抱いているのも悪くないのではなかろうか。
そういう切なさを何かで上塗りして良いのだろうか。
それって実は、とっても勿体なくない?

刹那的な大波に押し流してしまいたくもなる。一時の感情で溺れてしまいたくなるときもある。そんな脆弱な精神性を、そろそろ卒業した方が良い気がする。

あと数日考えて、たぶん私は一件LINEをいれると思う。
「やっぱりあなたには会えません、ごめんなさい」。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?