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【読書感想文】「運転者 未来を変える過去からの使者」を読んで

喜多川泰さんの著書「手紙屋 未来を変える過去からの使者」を読んだ。
Kindle unlimitedだったので、というきっかけで数ページ読み始めたら止まらなくなった。

私が……いや、今や日本に生きる多くの人が共感するんじゃないかと思える内容の小説だった。文字が大きくて読みやすいので、2時間くらいで読み終えられたのも良かった。

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仕事に失敗し、家族ともぎくしゃくし、全てうまくいかないと嘆いている営業マンの主人公。その男の前に、運命を変えてくれる場所へ案内してくれるという不思議なタクシードライバーが現れる。
そのタクシードライバーは、今の生き方がいかに主人公を不幸にしているのか……を少しずつ諭していくのだが、その話は今の自分にも言われているようで胸が痛くなった。

「自分だけ損をしている」「あいつは運がいい」「どうしてうまくいかないんだ」そんな不機嫌な気持ちで生きていると、自分を良い運に導いてくれるアンテナに気付けなくなってしまうという。
そしてなんと「運」は貯蓄することができるのだというではないか。
そして、「運の貯蓄」は自分の一生の中だけでは完結しておらず、連綿と受け継がれてきている命のリレーの中で起こっていることだと解いていく。

この「運を貯蓄し、回していく」という考えは、今やお金でしか価値を測れなくなってしまった現代社会に対し、大きな変革を促す力があるなと感じた。

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この物語の中で最も涙したのは、自分の知らないところで自分は祝福され、生かされてきたということに改めて気づかされたことだ。
そして「ない」ものを嘆くことに慣れた私たちは、「ある」ことへの感謝を忘れがちだということにも気づかされた。

個人個人、不平等さはあっても、自分が受け渡す世代へ何かを残すことができたなら、それは「プラスの人生なのだ」と運転者は伝える。

「そうだな」と、簡単に思えないことが多いのは現実だと思う。
けれど、私が今なんとかかんとか生きてこれているのは、自分の能力が誰かより優ってたり、運が良かったということだけではないかもしれないとは思った。
私が「今、ここに」生きていられるのは、これまで受け継いできてくれた人(両親、祖父母、親類、祖先、etc…)たちの恩恵には違いない。
そしてその恩恵は、私の後に続く世代にも引き継いで循環させていく必要があるのだろう。

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この作品を読んだ後にじんわり感じていたのは、できるだけ「毎日をご機嫌で過ごすこと」というのはとても大切だということだ。
自分のご機嫌が周りにも伝わり、結果的にたくさんの人をご機嫌に巻き込んでいくというのはとても素敵なことだと想像する。

うまくいかないことを他人のせいにするのは楽だ。
自分のイライラを他人のせいにすると脳内からは「オキシトシン」という幸福ホルモンが出るらしいので、結構癖になってまずいらしい。
そういう思考のループから抜けるには、やっぱり「できるだけご機嫌に過ごす」ことが必要だと確信する。

私は性格的に極端なところがあり、心身が不調になることは多い。
(診断は受けていないけれど、ADHD的な傾向が強いっぽい)
けれど、生活の中で度々生じる生きづらさを「誰かのせい」にしたり「記憶の中にある何かのせい」にする癖から抜け出さないと、きっと苦しい感覚の虜になって生き続けるのに違いない。

苦しいのに虜になるだなんておかしな話だとは思う。
でも、「苦しいけどこっちの方が慣れていて安心」と思ってしまうので、ついつい安易な感じで鬱気分になることが多い。
きっとなんでもない時に「楽しいことを考える」「辛いことを考える」を並べられたら後者を取ってしまう。
そういう脳の癖になってしまっているのだ。

***

私の目の前に小説のようなタクシードライバーは現れることはないだろうけれど、「私が本心から望んでいること」は私自身が知っていることだろうし、その内なる声にゆるりと従うことができれば……今よりちょっとだけ自分や自分以外の世界とも仲良くなれる気がする。

今日明日で、すぐに視界が変わることはないかもしれない。
でも、心の中に「ご機嫌」のワードを取り入れるだけで、もしかすると10年後の私は本当のご機嫌になっているかもしれない。

良い読書をしたので、そういう面で今日は小さくご機嫌だ。(笑)


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