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親父も鳴く

紅葉鳥もみぢどりがそろそろお盛んになる季節だな」
「親父、いつも言ってんじゃん、季語で話すのは止めてって」
「知らねえのか紅葉鳥?」
「知るわけねえじゃん。いったいどんな鳥なんだよ」
「それが鳥じゃなくてオスの鹿なんだよ」
「ますます分かんねえわ」
「紅葉と鹿って何か思い出さないか?」
「アッ花札だ、もみじの10点札」
「あの札、鹿が横向いてるだろ? 10点札の鹿が横向いてるから、知らんふりとか無視することを『鹿十→しかとお→しかと』と言うようになったんだとさ。きっと誰か書いてるだろうなぁ」
「誰に向かって喋ってんだよ」
「いや、ちょっとな」
「それは分かったけど紅葉鳥はどこ行ったんだよ」
「あ~それはな、この季節になると連れ合いが欲しいって鳥のような声でオス鹿が鳴くんだと」
「紅葉の季節に鳥のような声で鳴くオスの鹿のことを紅葉鳥だぁ? 回りくどいんじぇねえの。でもそれで連れ合いが見つかるんなら親父も山奥で鳴いてくれば? この前連れ合いが欲しいって言ってたじゃん」
「山奥に女性はいねえだろ」
「人間はな。でも親父は人間の女の人にはモテねえじゃん。山奥で叫べば鹿や猪や熊や猿のメスが寄ってきてくれるかもよ」
「俺はそれでも構わねえけど、上手く行ったらお前の母ちゃんになるんだぜ?」
「ウッそれは困るな、っていうかそれでも構わねえってどういうことだ」
「冗談だよ。さ、帰って花札でもやるか」
「それいいね、今日はどれくらい稼がせてくれるのなか?」
「そういうことは外で話すな」
「どうして?」
「この国では公営以外は賭け事禁止なんだよ」
「親父意外と真面目な」

今週もお世話になります。
小牧幸助様 よろしくお願いいたします。


#シロクマ文芸部 #紅葉鳥 #季語 #雄鹿 #花札 #しかと #連れ合い #公営以外は賭け事禁止 #真面目


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