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天真爛漫な彼女とちょっと根暗な僕 1

第一話

同じ町内、同じ年齢、同じ学校、同じクラスの幼馴染。
明確な違いがあるとすればあいつは女で僕は男。

小学校の頃からほとんど一緒に過ごしたようなものだから男とか女とか、そんなことは超越した関係だと思っていた。
だけど高校生にもなるとお転婆も少しは大人しくなり、世間の評判は鰻上りのようだ。

冷静に見ると顔は美形でスタイルも良く、学年一の人気者なんだよな。
もしも幼馴染でなかったら根暗な僕など近寄ることもなかっただろう。


ある日の学校の廊下での出来事
「暗い顔して何考えてんのよ」
あんず、いつものことだが後からいきなり抱きつくのは反則だと言ったろ」
「いいでしょ、カッチンにしかしないんだから」

それはそれで問題だということが分かってないのか?
あちこちで反感を買うのは僕なんだぞ。

「後ろからいきなり来られて僕が鞭打ちにでもなったらどうすんだよ?」
「一生私が面倒みるわよ」

そういうことは軽々しく言うんじゃないよ。

「暗い顔してって言ったけどあんずは後ろから来たのに僕の顔が分かるのか」
「カッチンのことなら何でも分かるわよ」

そういうことも軽々し……以下同文。

「なら僕が今どうして欲しいか分かるはずだよな」
「もっとくっついてほしいとか?」

今に始まったことではないが、こいつは頭のネジがいくつか飛んでる?

「僕は離れてほしいと思っているんだけど」
「またまたぁ」
「特にいつの間にか成長したその胸を背中にグイグイと押し付けるのは止めてほしいんだが」

「男の人ってこういうの気持ちいいんじゃないの? 私のおっぱいどう?」
「どこでその手の情報を聞いてきたかは知らないが、そういう行為が気持ち良い行為であるということに偽りはないだろう」
「カッチンも気持ちいいんでしょ?」
「僕も何となく気持ちが良い気がする。だけどあんずで欲情することはないよ」
「え~、どうして?」
あんずは僕に欲情してほしいのか?」
「だってどんな変化が現れるのか興味あるでしょ。他の人では試せないし」

そういうことか。

「僕は実験台ということか、それは残念だったな。とりあえず背中に取りつくのはやめろ」
「カッチンは私に興味がないの?」
「学年一の人気者なんだから興味がなくはないが、あくまで幼馴染だ」
「人気者とか幼馴染じゃなくて私個人のことは?」
「恋とか愛とかということならばあんずの相手は僕ではないと思ってる」
「どうして?」
「考えてもみろ、小さい頃からずっと一緒で、一緒に風呂にも入ったし、お互い素っ裸だって知ってるんだ。すべてを知ってるとは言わないが、そんな関係が愛とか恋に発展するのか?」
「あの頃からすればずいぶん成長したわよ」
「身体はそうだよな。それは背中に押し付けられた胸だけでも分かるよ」
「だったら」

「だったらどうだと? あんずはさっきも言ったけど学年一の人気者で、僕はその幼馴染。釣り合わないと思わないか」
「そんなことないよ。私にとってカッチンは大事な人だし、大好きだよ」
「その点は一致している。僕にとっても大好きな人であるし、大事にしたいとも思ってる」
「だったら釣り合わないなんて言わないでよ」
「先のことは分からないけど今はそんな感じなんだよ。それよりあんず
「何?」
「そろそろ重くなってきたぞ」
「それは残念、離れてあげるわね」

学年一の人気者にこうやって毎日のように揶揄からかわれている僕は、あんずの幼馴染として認識され、それなりの知名度はあるらしい。

つづく


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