三浦半島幻想文学会

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    大賞「高いビルの麓」 中森臨時

    「本の幽霊って見たことないですか」貸出し手続きをしていた時、女性が尋ねてきました。 「それは『本の幽霊』という名前の本ですか。それとも幽霊になった本が出てくる話ですか」このような曖昧な質問から本を探すのも司書の仕事です。 「そうではなくて、府立図書館には本の幽霊が出ますよね」私は意味が飲み込めず、返事ができないでいました。 「そんなの出ませんよ」振り向くと、同僚の田崎さんでした。その声に気圧されたのか、女性は急ぎ足で立ち去りました。 「ああいう人、たまにいるのよ。でも、本当は

      • 優秀賞「くるくる」 来福堂

         夕暮れの街角をあてもなく歩けば、路地裏にて、宙に浮かぶ皿たちに出会った。  ああ、あれに出会ったか、と頭上を見る。小ぶりな皿たちは列をなし、楕円の軌道を描いて、くるくると回っている。のんびり、おっとりとして、どこか優雅にすら見える。時折、一枚、二枚と皿が消えてゆく。  黄昏時だから、皿も上機嫌な模様。薄暮の街は、君たちの遊び場だもの。  自分は、淡々と、驚くでもなく眺める。子供の頃から、幾度となく出くわしているので、もう慣れたものだ。例えば、流れ星を見た、ぐらいの、たまにし

        • 優秀賞「恩智川の大山椒魚」 旭堂南湖

           明治生まれの祖母に聞いた話。  その昔、恩智川に大山椒魚がいたそうだ。現在、川は濁っており、清流を好む大山椒魚が生息していたとは、全く考えられない。祖母曰く、昔はぎょうさんいたらしい。そして、旨かったそうだ。  この川沿いに住んでいたのが田端のおっちゃん。五十過ぎの独り者。職業不詳。話が面白く、四六時中、酒を飲んでいる。祖母は子供時代によく遊んでもらったという。おっちゃんの眉間には卍形の傷があり、若い頃、大猪と格闘してできた傷と自慢している。その話を両親にすると、 「酒に酔

          • 第二回イベント 無事終了の御礼

             すでに先週の話になってしましたが、9月8日(土)に三浦半島幻想文学会第二回イベント「金井田英津子×東雅夫 文豪の怪談を描くこと/編むこと」が無事終了いたしました。  まずはご参加の皆様、そして会場をご提供くださったカスヤの森現代美術館の皆様に御礼を申し上げます。ありがとうございました。  そして出演者の金井田さん、東さん、お疲れ様でございました。  当日は、メインのトーク・イベントの前に、カスヤの森現代美術館がある横須賀市平作あたりを歩いて巡る一時間ほどのツアーを開催しま

            三浦半島幻想文学会第二回イベント告知

            森陰の異界で、金井田さんと語る                                                                            東雅夫(アンソロジスト) 「晩春の生暖かい風が、オドロオドロと、ほてった頬に感ぜられる、むし暑い日の午後であった。  用事があって通ったのか、散歩の道すがらであったのか、それさえぼんやりとして思いだせぬけれど、私は、ある場末の、見るかぎりどこまでも、どこまでも、まっすぐにつづいている、広い、ほこ