大賞「高いビルの麓」 中森臨時
「本の幽霊って見たことないですか」貸出し手続きをしていた時、女性が尋ねてきました。
「それは『本の幽霊』という名前の本ですか。それとも幽霊になった本が出てくる話ですか」このような曖昧な質問から本を探すのも司書の仕事です。
「そうではなくて、府立図書館には本の幽霊が出ますよね」私は意味が飲み込めず、返事ができないでいました。
「そんなの出ませんよ」振り向くと、同僚の田崎さんでした。その声に気圧されたのか、女性は急ぎ足で立ち去りました。
「ああいう人、たまにいるのよ。でも、本当は