優秀賞「くるくる」 来福堂

優秀賞「くるくる」 来福堂

三浦半島幻想文学会

 夕暮れの街角をあてもなく歩けば、路地裏にて、宙に浮かぶ皿たちに出会った。
 ああ、あれに出会ったか、と頭上を見る。小ぶりな皿たちは列をなし、楕円の軌道を描いて、くるくると回っている。のんびり、おっとりとして、どこか優雅にすら見える。時折、一枚、二枚と皿が消えてゆく。
 黄昏時だから、皿も上機嫌な模様。薄暮の街は、君たちの遊び場だもの。
 自分は、淡々と、驚くでもなく眺める。子供の頃から、幾度となく出くわしているので、もう慣れたものだ。例えば、流れ星を見た、ぐらいの、たまにしか見ない物を見た感覚、と言えば良いだろうか。
 出会ったところで、皿たちは、特になにか悪さをする訳でもなく、ただ、呑気に回るだけなのだから、恐れる必要もない。
 辺りは徐々に暗くなってゆくが、皿たちは行儀よく楕円の軌道を回るばかり。くるくる、くるくる、くるくると。
 これらは、ここ、東大阪生まれの、まだ若い、神のようなものだと言われている。
 それの始まりは、1958年、布施駅の北口からだった。
 飲食店を営む経営者が、コンベヤ旋回食事台というものを開発し、店を構えた。
 その店は、おおいに評判となり、瞬く間に支店が全国に広まっていった。
 そして、いつしか、この街では、小皿たちが目撃されるようになり、我々の日常に溶け込んでいたのだった。
 くるくる回る、小皿たち。東大阪生まれの、回転寿司の神様。
 旋回する皿に目を凝らすと、そのうちの一枚が、ちらと光を放った。
 やった、金色の皿だ。あれが見られたのだから、明日はきっと、良いことがあるだろう。

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