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クライアント中心アプローチと家族中心アプローチがぶつかるとき:A modified Conscious Decision-Making Frameworkがお助けします!(When client-centred and family-centred approaches clash: A modified Conscious Decision-Making Framework to the rescue!)

Evelyne Durocher

Occupational Therapy Now November 1, 2011

この文献はoccupational therapy nowというカナダ?の雑誌に書かれていたpractice scenariosというコラムのようなものです.具体的な事例を通じてクライアント(子ども自身)中心と家族(子どもの家族)中心のアプローチとの間で生じる葛藤を描いています.こういうこと,臨床では本当にあるあるだと思います.当然ここには正しい答えはありません.必要なのは正解ではなくプロセスです.この文献ではA modified Conscious Decision-Making Frameworkという考え方を利用して問題の解決?昇華?を図っています.短い文献なので,本文と私見を交えながら紹介します.

【サムとの出会い】

サムは12歳で兄弟とコンピューターやビデオゲームで遊ぶのが大好きです.彼は筋ジストロフィーの診断を受けています.サムは手動の車椅子を使っていますが筋力低下が進んでいるため電動車椅子に変えようかと考えています.ここ最近,彼は階段の昇り降りに最大限の介助を必要とし,それは段々と困難なものとなっています.サムは子ども部屋と浴室は2階,テレビとゲームの部屋は1階,コンピューターは3階と全てのフロアを使っています.OTは全てのフロアにアクセス出来るようリフト装置をお勧めしましたが,サムの両親は1階と2階の間に階段昇降機を導入することを望んでいます.両親は費用をカバーするためにチャリティー基金を利用しようとしています.OTは葛藤を抱えています.彼女は家族の選択ではサムのニードを全て満たせないと感じています.彼女はクライアント中心の原則を適用したいのですが,彼女の雇用主は家族中心のアプローチを命じます.誰の望みやニードを彼女は考慮に入れるべきでしょうか?

【modified Conscious Decision-Making Framework】

正式な日本語訳があるのかわかりませんが,倫理的な意思決定を助けるツールとしてカナダにはmodified Conscious Decision-Making Frameworkというものがあるようです.手順は以下の通りです.

ステップ1:状況を描写する

ステップ2:更なる情報が必要か検討し,資源を特定する

ステップ3:全ての可能性ある選択肢を特定して検討する

ステップ4:Go!

ステップ5:決定を評価する

【サムの場合】

ステップ1:今回の利害関係者とその意見を整理しています(下の表)

ステップ2:

同僚の意見や雇用主のポリシー,基金のガイドラインなどを調べます.

ステップ3:

以下4つの選択肢が出てきました.それぞれの案に利点・欠点があります.

ステップ4:

家族は4番目の選択肢(1階-2階に階段昇降機をつけて,コンピューターとビデオゲームは1階に集める)にしたようです.OTは本当は1案がベストと思っています.

ステップ5:

OTとしては4番目の選択肢は長期的な解決策でないと感じています(なぜなら筋ジスはこれからも進行するから).ただし,生産的な関係を維持するためにも今は関係を維持しつづけることも大切です.OTが両親の選択した案のメリット・デメリットをしっかりと伝えることが必要です.それにより,OTは妥協せず職責を果たしたと言えるでしょう.

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