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もう一つの「経済危機」

2008年11月8日に日経新聞夕刊に掲載したものを修正加筆したものです。

先日訪れたマサイ族の村で、マサイの人達は廃材になったタイヤを切ってサンダルにしていた。彼らは、僕たちの文明の不用品に独自の工夫を凝らし、上手に生活に取り入れている。

そんな彼らも、金銭のやり取りをする労働にはなじめなかったという。それまで、マサイ族の男達は自分の持っている牛を守り育てることが生活であった。

牛はマサイ族にとって通貨の役割をしていた。何頭牛を持っているかによってその人の財産が決まる。花嫁をもらうときは結納としてその花嫁が何頭の牛に値するか話し合う。

一夫多妻制なので、牛をたくさん所有していればそれだけ多くの奥さんをもらえることになるが、牛を持たないものは結婚対象にすらならない。

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