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山ダイエットの心得

2010年6月26日日経新聞夕刊に掲載されたものです。 

最近では、若い女性とも山道でよくすれ違う。数年前まで中高年の登山ブームと騒がれていたが、トレイルランニングがひそかなブームになっていることや、登山道具に若い人向けのファッショナブルなものが増えてきたこと、さらには登山にダイエット効果を期待している面もあるのだろう。

 鹿屋体育大学スポーツトレーニング教育研究センターの山本正嘉教授とミウラ・ドルフィンズのスタッフらが1カ月にわたり、①食事指導のみのグループ、②食事指導と毎日7000歩(1時間相当)のウォーキング③食事指導と週1回のハイキング(5時間相当)の運動を比較する実験を共同して行った。
 それぞれのグループは2キロ程度の体重減が見られたが、体の構成に大きな変化が表れた。食事のみのグループは体脂肪に変化はなかったが、食事とウォーキングまたは軽ハイキングを組み合わせたグループは、同じぐらい体脂肪率が減った。
 これにより毎日ウォーキングを行うことと、週に1回程度軽いハイキングに行くのは同等の効果が得られると結論づけられるが、週に1回の運動でダイエット効果が期待できるほど大きなエネルギーを消費する登山にはそれなりの注意が必要である。ダイエットばかり気にして何も食べずに登山を行うといわゆる「しゃり(舎利)ばて」と言って低血糖により筋肉が動かなくなる状態になる。低血糖から来るエネルギー不足で脳にも影響が及び、判断力や運動能力の低下、ひいてはけがや遭難などの重大な事故を招くことにつながる。

 山本教授によれば、しゃりばてを起こさないためにも知っておくと便利なカロリーと水の計算方法があるというから参考にしたい。それは登山中、消費するカロリー消費量と水分消費を大まかに計算する式で、カロリー消費の場合、体重×行動時間×5キロ㌍となり、水分補給も体重×行動時間×5ミリ㍑が必要となる。
 例えば60㌔の成人男性が軽いザックを背負い5時間程度の登山をした場合、カロリーは1500キロ㌍で水は1.5㍑が必要と分かる。これらのカロリーと水分を登山へ出発する前(朝食)と行動食に分けて補うのが理想的だろう。
 制限のみストイックなダイエットよりも適切なカロリーと水分補給で大自然を満喫してほしい。

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