いざスロージョギング
2011年11月12日日経新聞夕刊に掲載されたものです。
先日、大分県の湯布院でアンチ・エイジングキャンプを行った。キャンプに視察に来てくれたのが福岡大スポーツ科学部の田中宏暁教授だった。
田中教授が提唱しているのが「スロージョギング」である。人は歩くか、走るかという時に、スピードに合わせて最も効率の良い方法をとる。多くの人の場合、その境界線が時速7㌔前後だが、スロージョギングのペースはそれよりもゆっくりと走ることによって、速く走る時に出る乳酸を抑え長時間運動をすることができる。
スロージョギングのコツは、ニコニコペースで走る、顎を上げる、口を開けて、呼吸は自然に行う、フォアフット(足の指の付け根)で着地をする、30~60分をついやす――などである。
僕がこの方法に注目したのは、スロージョギングがフォアフット着地するからである。これにより、通常のかかと着地よりも衝撃が3分の1となり、ケガのリスクが少なくなる。
フォアフット着地理論について、僕はクリストファー・マックドゥーガル著の「ボーントゥーラン」に刺激され、2年前から行っていたことだが、田中教授はスロージョギングを10年以上前から実践し、推奨しているというのだ。
この効果についても長年研究しており、血圧の低下、善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを減らす、血糖値などの生活習慣病を改善する効果が認められるのに加え、脳の司令塔といわれる前頭前野の機能を高め判断力や記憶力が向上するという証拠を研究によって明らかにした。
これまでジョギングの有酸素運動についての有効性は多くの研究によって証明されてきた。半面、これまでのジョギングはかかと着地による衝撃が強く、足首、膝、股関節、腰などのケガを発症するリスクが高くデメリットも多い。
フォアフット着地は衝撃を劇的に緩和することから、これまでジョギングが持っていた弱点をカバーするエクササイズともいえる。
スロージョギングは有史以前に人が裸足で走っていたことをヒントに編み出されたという。元々、人は1日10㌔以上も狩りや採取のために走るように進化してきた。スロージョギングはまさに原点回帰のトレーニングといえるのである。
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